城壁前に

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上空で、巨龍が空を縦横無尽に飛び回り、対空火器を破壊している中、王妃フランチェスカは、城主アリエールと共に、ぼんやりと空を見やっていた。 「あっちはあっちで出鱈目ですわね。魔王の話では、体長150メトルのモビルアーマーを撃墜出来る者はいない!暁に日が昇る!完全勝利だふははは!とか言ってましたわね。モビルアーマーって何ですの?ところで」 「八王子にいた時に、彼はファーストを見たって言ってたわ。モビルアーマーは巨大なモビルスーツよ。特に特徴があるのはオールレンジ攻撃ですって。まあいいわ。城壁をぶち破るわよ」 バスタードソードを抜いて、フランチェスカは距離を取った。 「無茶をお言いではありませんわ!セントラルの城壁は、それだけで堅牢な砦ですのよ?!城壁内には確か、陸兵の三個大隊が常駐してますのよ?!」 「私の、メッタギッテモータに斬れない物はない。下がってて、余波で吹っ飛ぶわよ?」 大きく退って一歩足を踏み出した。 フランチェスカの履いているブーツが、べたりと広がり、地面に張り付いた。 メッタギッテモータ以外に、フランチェスカが求めたものは、彼女の靴だった。 ある一定の速度で接地した時、スライム状に靴底が変形する機構は、魔王の叡知と、おさびし村の不滅のスライム(トンニュラ)の出鱈目さの合作だった。 ふううううううううう。 深い調息は、さながら遠くに響く稲妻にも似ていた。 そして、フランチェスカの姿が消えた。 恐ろしい風が逆巻き、アリエールのスカートを捲り上げた。 慌ててスカートを押さえたが、面積の小さい、ジョナサンのお気に入りの菫色のパンツが見えた。 一陣の風の巨大な塊が、城壁を突き抜けた。 メッタギッテモータとフランチェスカ。 この二つが揃った時、防ぐ術は誰にも持ち得なかった。 巨大な穴が城壁に開き、穴の向こうに、恐怖のスピードクイーンが立っていた。 「行くわよー。アリエール。エメルダを呼んで。王宮を真っ二つにするわよ。マリルカごと」 1万人の兵を連れていたのだ。 それでも本気を出せば、王妃1人で何とかなる。 多分、王妃を止められるのは、イースト・ファームのおっさんレベルでないと。 後に、カテゴリー5の暴風(ハリケーン)と呼ばれる勇者の嫁は出鱈目。その一言に尽きた。 城壁内には、風圧に吹っ飛ばされた、数百人の兵達が転がっていた。
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