女王と神

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女王と神

ミラージュ女王が、王宮閨房指南役ディーテ・オリンポスを訪ねていた。 「あらミラージュ。結局どうなったの?パリスは特に」 「みんなで寄って集ってボコボコにして帰っていったわよ。まあ結局なるようになったのよ。ディーテ、ダーリンと会ったんでしょ?」 「ええまあね」 ジョナサンはあの時、ディーテを見据えていった。 「なあ、お前、ミラージュをカリスにするつもりだったろ?カリスってのは、要するにお前の使いだ。エインヘリアルみたいに、強引にミラージュを殺す気だったな?」 ジョナサンはどんどん冷めていった。 「ーーもしそうなら?」 「俺の可愛い愛人に何してんだアホンダラ」 「アフロディーテ様に無礼を働くか人間!」 やおら飛び出したタレイアの顔面に、ジョナサンの足が突き刺さった。 「ごめん。襲いかかられればそうなるよ。とりあえず義理のばあちゃんには悪いが」 エレファントガンをタレイアの顔に突きつけた。 「半分神なんだろ?これで死ぬかは解らないが、死ぬまで撃ち続けるだけだ」 「女の子の顔面を踏みにじるのね。本当に容赦ないのね。私にも牙を剥くの?」 「まあお前は神だからな。到底殺せる気はしないが、この世に殺せない生命はない。ーー試してみるか?」 極寒の空気。長い沈黙があった。 「ガイアがお気に入りのアースツーの勇者は厄介だこと。いいわよ。ホントのところを言うと、ミラージュを殺す気はないのよ。あの子は生きてた方が面白いもの。寿命が尽きた時、改めて神界に招待するわ」 「ああ。ならよかった。大丈夫かばあちゃん?」 「私がカリスでなければあんたは処刑してるわよ!私のミラージュが何であんたみたいなブロンズを!」 「悪い。もうそう言うのないんだ。俺はアカデミーの国王として正々堂々ミラージュをいただいた。もうやらんぞ。あれは俺の女だ。さっきジュボジュボしながらミラージュは俺のニャンニャン奴隷だってヒイヒイ言いながら。ミラージュのお腹の子に手え出したら殺す」 「このド畜生があああああああああああああ!」 先祖はめっちゃ激おこしていた。 「タレイア。お止めなさい。神として、アフロディーテの眷属としてらしくなさい。私は本当に誰も操ったりしてないわ。セントラルの奥で、セントラルの行く末を見ていただけよ。解ったら帰ってくれない?それとも、私とする?何となく解ったわ。貴方は私を抱く資格がある」 「馬鹿な!アフロディーテ様?!」 「遠慮しとくよ。お前等の匂いには惹き付けられないんだ。悪さだけはするなよ?」 あっさりパリスは去っていった。 「まあそんな感じで、貴女の先祖の顔面を蹴って去っていったわ」 「あの女にも一切容赦しないスパルタ人が。安心して。そのあとみんなに割られてたから。タレイア妃って、魔王より前の人よね?大丈夫?大丈夫か神の眷属だもんね。ああ、ダーリンがここに来た理由も解ってる。私を眷属にする気はないのね?だったらいいわ。好きにやってなさいよ。この子の成長を見守ってくれる?」 ミラージュはお腹を撫でた。 「改めて理解した。世界を得るに等しい男は独占出来ない。寝てると鼻摘まんでくるし。あの男と寝ると、鼻から汽笛みたいな音するようになるのよね」 「そこまでの男?貴女ほどの子がここまで言うなら、私が手を貸しましょうか?」 ふっ、と微笑んでミラージュは言った。 「欲望は際限がない。その先には破滅しかない。私は、世界の中心たる国家を率いる女よ。いずれ、本当の意味でアースツーとアースワン両方の中心になるかも知れない。そんな時、横に座る男の肩に凭れたい。それだけでいいのよ。愛する男の子供がいればそれでいい。意外?よく解んないけど、私はそんな母親になりたい」 アフロディーテは、幸せそうなミラージュを見つめていた。 「そう。そうなの。まあいいわ。覇道よりも愛。そんな子が、私の存在を認めた。貴女、神すら注目せざるを得ない女王なのに。うん。私帰るわ。神界に。またね。賢くも生意気なミラージュ」 アフロディーテは光を放ち、その姿は消失した。 その時、ミラージュのネックレスに変化が起きていた。 「美の神アフロディーテ。祝福してくれたの。ありがたくいただいとくわね」 アフロディーテのネックレスのチョーカー。美しい、見たこともない晶石は、強い魔力を放っていた。
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