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停滞
は?出せないの?
電話口でフランチェスカはワナワナしていた。
「済まねえな王妃ちゃん。うちの若い奴等は貸せなくなっちまった」
ホントに申し訳なさそうな声を出したのは、世界最強の地方人、イースト・ファームの長、イシノモリ・サゲンタだった。
ハッキリ言ってイースト・ファームの人間は規格外も甚だしい人材ばかりだった。
例えば知り合いであるファームの若頭、サザナミ・イサクがこちらについた時、アカデミーの完全勝利が確定する。
たった一人で何万人いようと軍は瓦解。
セントラルは滅ぶ。
「済まねえ。今度うちの青年組がセントラルのよ、独身の姉ちゃんとお見合い合コンすることになっててな。実はよ、前から合コンはやっててな?おさびし村は慢性な女日照りでよ。特にうちのマサルの奴は、女王の親戚の姉ちゃんといい感じでよ。いずれ村に新しい風が」
馬鹿馬鹿しいので電話を切った。
思えば、上手く行きすぎていたのだ。
あっという間にサンチャを占領し、ここを拠点にセントラルに侵攻、返す刀で王宮まで併呑、生意気女をさっさと処刑して夫と帰って幸せに暮らすつもりだったが、サンチャに到達した瞬間、法陣は使用不可能にされた。
法陣を使えば一瞬だが、物理的にアカデミーからサンチャまでの距離は、飛行挺で1日半かかった。
国防軍の足はサンチャで停止した。
兵站は伸びきり物資の調達すらままならなくなった。
おまけに。
「アカデミーの麗しき王妃様に申し上げます。この一週間での当店の飲み代をどうなさいますか?とりあえず346万ループ支払っていただきたいのですが」
はあ?
夫辺りはこの声を聞いただけで2、3日は戻らなかった。
だが、その声にママは1歩も退かなかった。
「これが私の戦場と思し召しませ。粗野でむさい男共に尻を触られながらも怒りを飲み込んで参りました。王妃様ほどの方なら、きっとお解りいただけると」
「ああはいはい。払っとくから。今度セクハラしたら憲兵に通報して。即処刑するから私が直々に」
殺人王妃モードになっていた。
思えば、相手はマリルカだったのだ。
あの魔王をして軍略の天才と言わしめるクソ生意気な女王。
これでハッキリした。あの子はもうとっくに防衛を行っていたのだ。
馬鹿馬鹿しい、鬱陶しい戦はもう始まっている。
うちの人をかっさらっといてそういう真似するのね。
部屋の調度が揃ってバラされた。
やる気なのね?!だったら、売られてるなら買ってやるわよ!覚えときなさい!
「失礼致します。今しがた殿下が破壊したお部屋の家具調度のお支払は」
ピキ。
「買ってやるわよだからあああああああああ!」
王妃としては素直に帰るレベルの出費だったという。
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