犬の孤独な戦い始まる

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犬の孤独な戦い始まる

さて、困ったことになった。 思えばミラージュ、いや中央国家セントラルはアースツーの中つ国と呼ばれる、まさに世界の中心だった。 ハッキリ言ってセントラルに比べたら、アカデミーなんぞ田舎にすぎないし、アカデミーの国王ったってセントラルの政治的に言えばただの辺境伯でしかないんだよなあ。 セントラルでなくてミラージュの個人融資額も物凄いし。国債なんか粗方ミラージュが買ってるだろう。 ハッキリ言って一切文句言えない。 そんな俺がベッドの上でミラニャンちゃんを一生懸命耕してるのは、俺が救星の勇者だからだそうだ。 あー。凄いいい匂いするしミラニャンちゃんチューチュー吸い付くし。ああああ。 思わず出ちゃったよ。気持ちよすぎ。ミラニャンちゃん。 「早い。もうちょっと頑張れダーリン。あとパンツ返せって」 居住まいを正してミラージュは公務に出掛けていった。 俺はベッドにあぐらをかいてあの馬鹿について考えた。 やっぱりパンツは凄いがした。 一々イラッとするけどあいつ可愛い愛人だしなあ。 ところでジョナサンは驚いていた。 ホントにこいつ先週までだったのか? 今ではジョナサンが食われっぱなしになっている。 経験値ではこっちが上のはずなのに。 と言うかそもそも協調路線を引いていたアカデミーの国王を軟禁して何のつもりだ? しかも軍事衝突すら厭わないという強硬さ。 挙兵したフラさんもフラさんだがミラージュも何も馬鹿正直に買わんでもいいだろうが。 どうしようか。調べものしようにも携帯取り上げられちゃったし。ジェイドに。 どう立ち回ろうか。そう考えていたジョナサンは、王宮の廊下で銃声が轟くのを聞いた。 「あ?」 あー。そうかそうだった。 「アルテミシア」 「マスター」 やっぱり降ってきた。天井から。 「何故解ったのでしょう?完璧なハイディングと思ったのですが」 いたのはよく知ってるアカデミーの幹部職員だった。 実際気づいていなかったが、来ることは解っていた。 いるならどうせ天井と思っただけで。 「近衛が銃を本気で撃つならまあ、お前くらいだよな。まさか正面切って乗り込むとは流石に。みんな馬鹿なのか?フラさんもミラージュもお前も。何を本気になってんだ?」 「馬鹿とは随分なお言葉。ちなみに私の存在は誰にもバレていません。銃声は囮です」 「誰だ?カルミナか?」 「カルミナ先輩ではありません。私の後輩なのですが」 あー。そう言えば、そんな奴いたな。 確か、フラさんの直弟子の、14歳のユーリだっけ。 「ユーリ何だっけ?」 「ユーリディス・ニルバーナさんです。殿下の見出だした逸材です。ノース・アイランドのよく解らない僻地から来たそうで、同じくおさびし村から来た私の覚えもいい子です。大人しく捕まれと殿下も言っていたので」 あー。捕まったのか。と言うかフラさんどこまで好戦的だよ。 ってことは、フラさんユーリが捕まることを前提としてるってことで。 「アルテミシア。フラさんの考えを含めてきちんと話してみろ」 「はい。私がセントラルに潜入した理由は明らかです。父と私が敬愛する女王陛下とアカデミーの激突を、どうにか未然に防いでいただきたいということです」 まあそれは思ってたよ。俺も。 「もう一つは、私としては言いづらいのですが、ユノ姉様が陣痛が来たと苦しんでいらっしゃいます。間もなくお子様がお生まれになられます。誰か?」 ジョナサンは、思わず立ち上がっていた。 アルテミシアの指摘通り、誰かがそこにいたと気付いていた。 「差し迫っていらっしゃるようで」 現れたのは、美しく若いだった。 「ーーお前は?」 よく覚えている匂いに、ジョナサンは緊張していた。 「兄を、クレアを覚えていらっしゃるようで。貴方のことは陛下から聞いております」 「ああ。勿論覚えてるさ。一度記憶した匂いは忘れない。それで?何の用だ?ファルコーニさん」 ジョナサンの記憶の中に、目の前にいる人間とソックリの人間がいた。 そいつの名前はクレア・ファルコーニ。またの名を。 「お前からは一切血の匂いがしない。クレアの、ユリアスの後継者のことは忘れていいのかな?ミラージュが側に立たせてる以上、それは疑う余地はない。お前の経歴は完全にクリーンだ」 フ、とかすかに微笑んで、そいつは言った。 「王宮付き美容兼閨房補佐役、シリル・ファルコーニでございます。陛下のご宸襟を支え、健やかにあらし奉るのが(わたくし)の職務でございます」 実際こいつからは怪しいところはまるでないが、よくミラージュはをこいつに任せたな。 「偉大にして高名な英雄王陛下にお伝えします。我等が麗しき絶対権威者、ミラージュ女王陛下の暴走の背後には、怪しい女の影がございます」 「話は最後まで聞こう。その前に、王宮の転移法陣は使えないんだな?」 「はい陛下」 「だったらサンチャまで走る!ユノの初産に立ち会わずして俺は生きていけようか?!っていうか俺がまずおさびし村の連中に殺される!千早(正拳突き)食らって赤い塵になって散るのはごめんだ!」 「イサク兄様はぶちこみたくてウズウズしています」 「ほらな!あいつ等絶対やるぞ!さっさとアカデミーに帰る!お前等!協力してくれお願い!」 有無を言わせずジョナサンは断言した。
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