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彼等の正式な種族名を音声にすることは不可能である。例えば、波しぶきや風の音を口真似することはできても、正確に発音することができない事に似ている。さらにつけ加えれば、過塩素酸塩の塊りに人間の言葉が通じないのと同じなのだ。彼等の身体を構成する細胞?には、爆薬の原料になる過塩素酸塩が含まれている。かといって、爆薬族というネーミングも憚られた。
彼等の知能は、人間のそれをはるかに凌駕していた。神の領域といってもよい。その証として、ヒト型の通訳機を提供してきたのだから。通訳機は日本語で生い立ちを述懐した。
<西暦1490年、我々の船はベテルギウスの核融合爆発に巻きこまれた。そのエネルギーは、時間を停止させ、空間を捻じ曲げ、重力と光を崩壊させた。
当時、我々の船はベテルギウスから300億キロメートル離れた星域をワームホール航法で通過中だったが、超新星の爆発エネルギーはチェレンコフ効果により甚大な影響をもたらした。ワームホールは地球と直結することになり、操船の軌道復元もままならず、我々の船はマントル層に閉じ込められた。この地に降りたのは不本意であった>
ベテルギウスが爆発したのは530年ほど前。まだその光は地球には届いていない。届いてはいないが、【時間のないワームホール】を辿って来た彼等は530年前には地球のマントル層にいたのである。何とも、ややこしい話だ。
それ以上に奇怪なのは、地球人類の歴史や物理学用語に精通していることだった。500年以上もマントル層に閉じ込められてたままでは地球の出来事に触れることなどできないはずである。
「にもかかわらずだ・・・」徳永はぼそりとつぶやいた。「全てお見通しときてやがる」
その極めて厄介な連中と手を組んで深海鉱床の採掘をしているのが、マリンプラネット社だった。どういう経緯で取引が始まったのかは、極秘になっている。会社の最高指導者クラスの人間しか知らないトップシークレットなのだ。
百年分、千年分のレアメタル鉱床を商業ベースで開拓採掘できる技術を、彼等から提供してもらう見返りに、会社は技術者や一般社員を研修の名目で彼等に差しだしていた。彼等が欲している対価は、金銭ではなくヒトなのだ。
稀に、行方不明になる者たちもいて、今回もそのエピソードの一つなのだろう。
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