光の射す道へ

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光の射す道へ

「…………」 「ライア、ここで手をこまねいて待っていてもオリエは死んでしまう。だったら、少しでも生きられる可能性のある道を選んだほうがいいと思うんだ」 「探し出せなかったら?」 「……その時は、ライア。僕は今の君と同じ気持ちになるだろうね」 「…………」 お互いが無言のまま、時間が過ぎていった。 時を刻む時計の針が、カチカチと音をさせて、胸に迫ってくる。だが返って、その規則正しい音が、冷静さを連れてきたようだ。 「俺は大陸を目指す」 思い通りの返事で、セナは嘆息の息を吐いた。 「ライア、」 「もしかしたら、大陸へ向かったそいつが何か知っていて文献でも遺していたらってことだろ?」 「ああ。だけど、そんな雲を掴むような話に頼ることはできない。だから、ライア。各地で色々なサンプルを採取し、ルキアに送って欲しい。植物でも鉱石でも、これというものなんでもだ」 「わかった。おまえはおまえで、ルキアにオリエを連れていって、その方法を見つけてくれ」 「うん……でも、オリエの命、は……」 今までの力強さがどこかへと去ってしまったかのような、セナの弱々しい声。 一年に一度の鈴果で、次の一年を生きるのだから、今回口にできなかったことを考えると、死期は直ぐにもやってくる。 その猶予が半年あれば良い方だろう。 ルキアへの道のりは、ロキロキという馬の脚でも半月はかかる。 そして、大陸と呼ばれる広大な土地の中心地には、辿り着くだけで三月はかかってしまう。 何らかの方法を手に入れたとしても、そこからルキアまでの道のりは、気が遠くなるほど遠い。 (……間に合わない) 二人の中にある共通の認識。 「だとしても、やるしかないだろ」 決まった。 二人の道に、光が差したような気がした。 けれど、その光が心もとないものであることは、ライアもセナも痛いほどに知っていた。 ✳︎✳︎✳︎ 「オリエを連れていくとは……無謀な話だが、」 前回と同じようにして、サンダンの前に立ったライアとセナは、今回二人で話し合った計画について、父親の了承を得ようと必死に説得していた。 「けれど、フューズ、これしか方法はありません」 ライアよりは分のあるセナが、一歩前に出て、更に続ける。 「希望があるかもしれないんです……少しでも、生きられる可能性があるなら」 セナの必死な姿を見て、ライアの頭の中は冷めていた。
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