外の世界

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外の世界

そんな心ここに在らずなライアの様子を見て、シマが心配そうに声をかけた。 「ライア、食事して」 シマを見る。大陸の中でも美人枠に入るだろう。切れ長の目を細めて眉根を寄せていても、その美貌は損なわれない。 癖のない真っ直ぐな黒髪をさらりと揺らして食事の支度の手を止めている。 シマの顔に陰が差しているのを見て、これ以上は心配させまいとライアは笑った。 「ああ、ありがとう。食べるよ」 シマを気遣って笑ったつもりだったが、口の端でしかそれができずにいる自分。虚しさにとらわれてしまうといつもこうだ。そんな自分に呆れつつ、椅子に腰掛けた。 ライアが大陸の中央部に着いたのは、三月前。これ程に広大な土地がこの世には存在していたのかと、驚愕すらした。地平線まで見渡せるような広さ、だがそれは見える範囲としては、大陸の一部に過ぎないのだという。 (……俺たちは、外の世界のことを何も知らなかったんだな) 大人のいない狭き街にて、『ダウナ歳時記』のみが生きる手本。 振り返ってみればランタンの学校の学識高い教師達でも、外の世界のことは何一つ教えてはくれなかったのだ。 今となっては、それが意図的になされていたような気がして、ライアは当初混乱した。 (鈴果を食べたダウナ人のほとんどが、ルキアという地に向かっていたなんて。ダウナ歳時記に書かれていたなんてことも、セナに言われるまで全然気がつかなかった) 勉強は苦手だった。 「苦手なんて言って、ライアは今回の試験、学年で十八番だったんでしょ? 何だかズルい」 口を尖らせて、本気で怒っているオリエの顔。 花のような明るい笑顔とは、まあ程遠いけれど、怒った顔も細めた目に愛嬌があって可愛いと、オリエが怒っていてもライアはいつも心では喜んでいた。 「オリエは何番だったんだ?」 ライアがわざと問うと、オリエがむくれたまま、成績表をずいっと出す。 「……三十五番」 ライアが呆れたようにして、腰に手を当てる。 「今回の勉強だって、俺たちで教えてやっただろう。ランタンの象形文字なんて、形で覚えちまやあ、どうってことねえのになあ。なんでこんな点数になっちまうんだ?」
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