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知らされる真実
ダウナの街で子供たちを教育し、突出した才能を育てること。
その中の優秀な一人を選び、鈴果を与えてから、ルキアの研究施設へと送り込むこと。
そこでは、ランタン人が鈴果なしで生き延びる術を、研究していること。
そして、衝撃的な言葉は続いた。
「それから、鈴果の数は年々減っている。もしかしたら、鈴樹の寿命が近づいてきているのかもしれん」
娘に真実をと意を決した父の顔には、酷い悲壮感が漂っていた。顔を歪めたまま先を話す。
「ここ数年、数が足りていなくてな。数人の年寄りには、遠慮してもらっている」
「そ、そんな、」
「仕方がないのだ、私だって一人でも多くのランタン人を救いたい。このままではランタン人は……お前ひとりだけの問題ではないのだ。オリエ、お前なら分かるだろう」
「…………」
「鈴樹を新たに育成することもできない。何度も試したが、どんな方法でもだめだった。育たないんだ」
「…………」
無言のオリエを置いて、サンダンは次へと続けていった。
「セナに賭けるしかない。彼は今までの人材の中でも飛び抜けて優秀だ。ランタンを助ける何かを発見してくれればと思って、彼を選んだんだからな」
「でもっ! 鈴果を食べる人を決めるのは平等にと、選んだのはクジだったはずよ!」
「セナには事前に選ばれたことを知らせてあった。そして、クジを取り仕切ったのは、セナだ。全ては、セナの案なんだ」
「……うそ、」
口から、頭から、何の言葉も出てこない。
「セナはランタン人を生かすために、その人生を研究へと捧げると約束してくれた。それはオリエ、お前のためにでもある。彼は、お前や私たちランタン人が、鈴樹に頼らない方法を何としても見つけ出したいと言ってくれた。それで、クジの不正の件も了承してくれたのだ。かなり、心を痛めてはいたがな」
サンダンが、はああっと大仰に溜息を吐いた。
そして、両手で顔を覆うと、よろよろと近くにあった椅子に腰を下ろした。
「……それなのに、どうしてお前はライアなぞに鈴果をくれてやったのだ。ライアは確かに優秀だが、セナほどではないし、研究にも向いてない。リンドルの名手だというだけの、ただそれだけの男だ」
この時、放心状態だったオリエの心に温かいものが灯った。
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