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驚き
同じ大陸のはずなのに、住まう地域が違うだけで、こんなにも食べる物に違いがあるのかと、ライアは驚きを隠せなかった。
そして、改めてシマの家で過ごした期間のことを考える。一ヶ所に留まり過ぎたことを苦々しく思い、ライアは顔をしかめた。
これからもっともっと、この広い世界を這いずり回らなくてはいけないというのに、だ。
「これは、ランスロウという野菜だよ。サラダ菜の一種で栄養もあるし、これ食べるだけで疲れもとれる。俺が作ったんだ。自分ではうまくできたと思うけど」
出されたスプーンですくって口に入れる。
やや、冷えかけてはいるが、よく煮込んであるのか、口の中でとろりととろけた。美味しい。
ライアは、ランスロウの煮物を何個か食べると、スプーンを置いて言った。
「うまいよ」
すると、ロイは満面の笑みを返してきた。
「ほんとう? 父ちゃんは、そういうこと、全然言ってくんねえから、嬉しいよ」
作った料理を褒められて、嬉しくないわけはない。
「料理が上手なんだな」
再度褒めると、他にもあるぞと、棚から出してくる。
どれも子どもが作ったとは思えないほど、美味しい。ライアはそれをおおかた片付けると、父親にも礼を言おうと部屋を訪ねた。
ノックをし返事を聞いてから、ドアから中を覗く。
ライアは、あっと声を上げた。
「なんだ、これは。部屋の中が凄いことになっているな」
部屋を見渡すと、床や天井、壁などのありとあらゆる場所に、たくさんの枯れた植物や何かの種や実などが、ピンで留めてある。
それはさながら、植物の博物館のようで、その豊富な量や種類に圧倒されるほどだ。
ぎっしりと中身の詰まった棚の引き出しからは、多種多様の布がはみ出している。
ライアが、見回しているのにも頓着することもなく、ソルベは机に向かったまま微動だにしない。
「なにをしているんだ? なにかの研究か?」
背中に声をかけるが、反応はない。
すると、後ろの部屋から声が上がって、ライアは振り返った。
「今、父ちゃんに声かけてもだめだぞ。あんたに貰ったサルダ芋を調べているんだ。珍しいものが手に入ると、すぐこれだよ。今日はメシも食べないし、当分は徹夜になるよ」
「何を調べている?」
「まあ、いろいろ。成分やら何やら」
「どうして、そんなこと、」
「父ちゃん、これでも研究者だかんな。そういうのを調べて、金をもらってんだ」
「……もしかして、ダウナ人か?」
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