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ライアからの手紙
(本当なら、もっと歓喜の声を上げて報告すべきことだったのに)
セナは動揺の中で一度取り戻した落ち着きを、また呆気なく手放してしまったことに苦笑した。
オリエの前では、自分はこうも弱くなる。それを思い知らされて苦味が広がった。
けれど、そんなセナの暗さを含む声にでも、オリエは嬉々としてモニターの前へと張りついた。
『本当? やっと連絡してきてくれたのね! 元気なの? ライアは、何て?』
「手紙、読むよ」
モニターのマイクの部分に口を近づける。
けれど、この日はいつものように、モニターを撫でる気にもならなかった。
オリエを見る。
頭のてっぺんから爪の先までの喜びで満ち溢れている。
その小柄な身体で跳ね回る、そんな姿を見て、セナは重い口を開けた。
「オリエ、その前にまず話しておきたいんだけど。大陸の中南部のツルマンの川沿いに住んでいるソルベという研究者が、研究対象物の収集に協力してくれているんだけど、どうやらその人の元にいるらしい。ソルベが送ってくる定期的な荷の中に、ライアの手紙と収集物が入っていたんだ。彼は元気でやってるみたい」
『そう、そうなの、それで?』
急かされて、言葉に詰まる。頭の中では、話す順序を整列させてあったというのに。
「中には物珍しいものもあった。その成分などを直ぐに調べに取り掛かるよ。じゃあ、……手紙を読むよ」
観念して、手に持っていた紙を広げる。
ざらりとした手触り。手紙には砂のようなものが付着しているのが分かる。
その手紙の状況に、ライアの旅路の過酷さが垣間見え、複雑に思った。
付着した砂を少し払って、セナは読み上げていった。
『セナ、オリエ、元気でいるか。俺は、元気だ』
ここで一息、呼吸を入れる。
オリエが前に乗り出すように身を動かした。溜め息を吐きたくなったが、すんでで抑えた。
『森や川で拾ったものを送る。場所は大陸の中央部とツルマンの近く、詳細の地図は使いの者に渡してある』
『ライアは元気なのね、元気でいるのね』
何度も呟くオリエを見て、セナはさらに複雑な思いを抱えさせられた。
ぼんやりと手元の手紙を見る。
いや、見ているかどうかも定かではない。
セナは、続きを読み上げた。
『セナ。引き続き、可能性のありそうなものを送る。研究の方は頼んだ』
そして手紙を丁寧に折った。
『え? それだけ?』
オリエが小さく言う。
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