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光
机周りの書類をガサガサと探り、その間から出てきたペンを乱暴に掴むと、データの横に走らせた。
「セナ、」
背後で声がかかったが、ああ、と返事を返しただけで、セナはその作業から目を離すことができなかった。
サリヤが、呆れ口調で書類を机の上へと投げる。
「この前のツルマンの川沿いから持ってきた砂だけどな」
言葉にセナがガバッと振り向いた。その様子に、さらに呆れた顔を寄せると、「ハズレだったぞ。手紙についていた砂とは、まるで成分が違うんだ」
「……そんな」
絶望とはこういうことか、セナは自分が暗く寒い穴へと落ちていく感覚に陥った。
セナの凍りついていく表情を見て、サリヤが慌てて言う。
「でもな、朗報もある」
「…………」
見上げる眼が、おぼろげに濁る。
「使いの者が、ライアは不在で川沿いの場所がどこなのか特定できなかった、と言っていただろう。あれ、場所はどうやら合っていたようだぞ」
「どういうことだ?」
「案内してくれた少年が、機転を利かせて、色々とその周辺のものを持たせてくれただろ?」
「ああ、確か元ルキアの研究員の息子、か」
「そうだ、その子が選んだサンプルの中に、鈴果と一部が同じだと思われる成分が見つかったんだ」
「なんだって! それはなんだ?」
セナは自分が知らず知らずのうちに、腰を浮かせて立ち上がっていた。
「藻だ。川沿いの岩にこびりついていたという、藻だよ」
「藻?」
「ああ、こちらに着く前に干からびてしまったけどな。今、サラが調べているよ」
「……じゃあ、その川の藻が、乾燥して砂と混じり合って、それがライアの手紙に付着したってことか。確かにあり得るが、」
「凄えな。こんな偶然、奇跡だと思うよ」
「僕にもそのサンプルをくれ」
息を吹き返したようなセナの様子を見て、サリヤは笑って踵を返した。
「サラから奪い取ってくるよ」
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