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手紙
それはすでに、ルキアでは研究されていたことだったけれどね。
そうとは知らず、僕はそれを学校に提出した。
それが、評価されてね。
僕は、フューズからルキアへと行って欲しいと言われていた。
最初、僕は迷うことなく断った。
けれど、ランタンが絶滅の危機に瀕していること、鈴樹が枯れかかっていること、それらを聞かされて、僕の道は、鈴果を食べてルキアに行き、鈴果の代替品を研究し探し出すしか、僕たち三人が生き伸びる道はないと思えてきた。
クジに細工をして、みんなを騙したんだ。
許してくれ、みんなには心から謝罪したい。
けれど、心で謝罪したって、許されない罪なことは知っている。
みんなを騙して手に入れた鈴果を前にして、僕は罪の意識に苛まれた。
その時に、この罪に抗う意味もあって、僕は君を助けようと思い直した。
けれど、君が知っている通り、それはオリエに先を越されてしまったんだけどね。
それで、自分が手に入れた鈴果は、オリエに食べさせればいい、そう思っていた。
けれど、今、オリエに食べさせて、その次の年は?
鈴樹が枯れてしまい、この先オリエが鈴果を口にできなかったら?
僕は、もう一度考えた。
オリエを助ける方法は、ルキアへと行って、そしてそこで自分の論文の成果を出すしかない、と。
いざとなれば、オリエに鈴果を一粒は食べさせられる。
そして、僕の寿命は、二十歳までとするならまだ、二年弱ある。
心底ほっとしたのは、ルキアに着いた時、すでに大きな無菌ドームができあがっていたこと。
そこにオリエに入ってもらい、疫病から遠ざけた。
結果、君には過酷な旅を課してしまって、本当にすまない。
オリエを僕に預けて、君は何年、旅していたのだろう。
オリエなしで、君は生きられるだろうかと、僕は何度も、考えた。
僕はずっと、こうしてオリエの側にいるというのに、君はたったひとりで、生きられるだろうかと。
ライア、すまなかった。
過酷な運命を、君に押しつけてしまった。
けれど、もう何の障害もない。
君はオリエと、これからもずっと一緒に生きて欲しい。
オリエ以外の女性と、結婚なんてしていないとわかっているよ。
オリエを守って欲しいんだ。
頼むよ、これが僕からの、最後の頼みだ。
君は必ず、オリエを幸せにする。
僕は、信じている。
この手紙もきっと、君に届いている。
オリエを愛している。
けれどそれと同じくらい、君のことも想っている。
君は、いつも真っ直ぐで、誰よりも強い意志を持ち続けていた。
時々ね、羨ましく思ったこともある。
君は自由で、自分の強い意志のもと、何もかもを自分の力で成し遂げていったんだ。
君と親友でいられたことを、誇りに思う。
さあ、もうそろそろこの手紙も終わりにしよう。
オリエをよろしく頼む。
三人で過ごしたあの大切な、緑陰が揺れる丘の思い出だけを、僕は抱きしめていく。丘に吹く風にでもなって、君たちを見守ることにするよ。
いつでも、側にいる。
そして、いつまでも。
二人の幸せを祈っている。
ありがとう。僕の愛する幼馴染たちへ
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