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強き意志
丘を駆けていく風が、ライアの髪を、頬を、撫でていく。
唇を噛んだ。
けれど、やはりどうしても我慢できずに、ライアは慟哭した。
最期まで。
セナは、オリエを愛した。
その強い想いは、ライアの中に深く潜り込んできて、そこに強固な根を張っていくように沈んでいった。
そしてそれは、元々そこにあったライアと同じ想いと、絡まり合い、繋がっていくのだ。
ライアの決心は、何よりも固く強い。
そして、セナも同じように。
死んだ父親の代わりに、新たにランタンのフューズとなったオリエを、これからも変わらずに愛し続ける。
これからもずっと、永遠に。
✳︎✳︎✳︎
「お母さまあ、見てえ。ほらあ、これっ!」
ころころとした笑い声と同時に、右手を高々と上げながら走ってくる少女に向かって、オリエも手を上げて応える。
「リアナ、そんなに走っては、転んでしまうわよ」
はあはあと息をしながら、オリエのもとへと駆けてくると、リアナは手に持っていた花束をぐいっと前に出した。
ブルーの可憐な花だ。振り回されたからか、少しだけくたりと首をもたげてはいるが、その可愛いらしさを存分にアピールしている。
身も凍らすような寒い時期がようやく終わりを告げて、暖かい季節がやってくる。そんな時期に咲く花を見て、もうそんな季節が来たのだと、オリエは感慨深く思った。
「もうすぐ、お父さまもお帰りになられる頃ね」
そう呟くと、その傍らでリアナはぱあっと顔を明るくし、ぴょんぴょんと飛んで小躍りした。
「やったあ〜、お父さまはいつ帰られるの?」
つい口に出してしまったが、まだ帰宅の日が決まっているわけではない。
定期的な知らせは届いているが、その中で一番最近届いたものには特に何も書かれてはいなかった。
「それが、まだ分からないのよ。ごめんね、リアナ」
途端に両頬を膨らまし、唇をむうっと尖らせる。
「えぇえ……」
「今度もきっと、リアナにお土産を持ってきてくれるわ」
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