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その力強き光
ふと、横に目をやると、オリエも同じ顔をしている。
「いや、違うんだ。ちゃんと、お土産はあるよ。忘れていないから、大丈夫だ。そんな顔をしないでおくれ。さあ、オリエも中に入ろう」
ライアはリアナを抱き締めたまま、反対の手で荷物を担ぐ。そして屋敷の中へとオリエを促した。
✳︎✳︎✳︎
「リアナ、とても気に入ったのね。寝る時も、離さなかったわ」
「そうか、良かった」
「……カナタか、リアンの持っていたものね。あなたの顔で察しがつく」
懐かしい名前。ライアはその二人の姿が現実の世界にまざまざと浮かび上がってきて、同時に深い悲しみを覚えた。
たった一つの鈴果を奪い合った、同じダウナ人の同級生の名前だ。その名を口にするには勇気が要り、口にすれば気が狂いそうな悲痛な思い出が襲ってくる。
泣きそうな顔をして、ライアはオリエを見た。
「リアンの、形見だよ」
勝気な性格が、その美人の顔にも表れていた、リアンを思い出す。
ルキアで、セナが作り出した薬の投与が間に合わず亡くなった、カナタとリアン夫婦の荷物を片している時に見つけた、可愛らしい人形だった。
「持ってくるかどうか、迷ったんだが」
「リアナに渡せて良かったと思う。ママの形見だもの」
ライアは手早く荷物を解きながら、汚れたタオルや下着をベッドの上へと放り出す。
「そうだな」
もう一人の同級生ユウは、ルキアの研究員だった恋人のルイと再会し、結婚した。
生きている。
それだけでも、救われた気になる。
「それより、」
ライアが強く言い始めたのを、オリエが苦々しい顔をして迎える。
「オリエ、結婚は……」
「ライア、その話はもう何度も、」
「俺だって、何度でも言う。君は、ランタンのフューズだ。後継ぎが必要だろう」
「後継ぎなら、リアナがいるわ」
「オリエ、」
「ライア。私だって何度も言うわ。私は結婚はしない。けれど、リアナとあなたが。あなたが生きてさえいてくれれば、それでいい」
オリエの顔には強い思い。
瞳にはその意志の強さを宿していて、それは小さい頃から変わらないのだ。
ライアは、幼い頃、丘を駆け回っていた頃のことを、思い出した。
普段は優しさを配って歩くオリエが、自分でこれと決めたことは、絶対に譲らないことも。
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