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「挨拶はこれでいいんじゃないか。美佐江ちゃんもシェフもいいって言ってるし。もうこうなったら、誰も止められないし」
困っている私達に、ギンさんが助け舟を出してくれた。
「ありがとう。じゃ、そういうことで。もう行くね」
「折角来たんだ。飯食っていけよ。オムライス作ってやるから」
「わーい。ギンさんのオムライス食べたいー!」
「いおちゃんもイチと結婚したし、みおちゃんもミチと結婚かぁ。いいじゃないか。めでたい、めでたい!」
「ありがとうございます」
ギンさんとは道弘さんも顔見知りだから、優しい笑顔でお礼言っている。ふふ。いいなあ。こういうの!
「ミチは昔ヤンチャしていたんだって?」
「お恥ずかしながら、人には言えない過去が」
「三十歳も過ぎりゃ、人に言えない過去のひとつやふたつ、あらーな」
がはは、と豪快に笑ったギンさんは、道弘さんの背中をドン、と叩いた。「俺もヤンチャしてたクチだからさ。よーくわかるよ」
「ギンさんが? それは初耳ですね」
そうなのよ。昔の名残が時々顔を出すギンさんは、怒ったらチョー怖いんだぁ。
普段は優しいけれど。私とお姉ちゃんが一度、近所の悪ガキにちょっかいかけられた時とか、イチ君が虐められていた時、すっとんで来て鬼の形相で子供相手に凄む人だったからね。
ヤーまで行ったかどうかは解らない。でも、相当な悪だったと思う。元祖鬼?
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