2006人が本棚に入れています
本棚に追加
「そりゃ訳アリですなんて、誰にも言わんからな。若い頃、ヤンチャしてムチャクチャしてた俺を先代が拾ってくれて。何処へ行っても煙たがられていた俺を、先代だけが初めて人間扱いしてくれたんだ。そりゃもう、嬉しくてさ。恩返しのために必死で働いたよ。お陰で一人前の料理人になれた。独立も勧めてくれたけれど、俺はここで骨を埋めるって決めたからさ。雇って貰えているうちは、死ぬまでここで働く」
何処かで聞いたようなストーリーね。道弘さんの境遇も、ギンさんによく似ているわ。
「成程。緑竹家がヤンチャ者に寛容な理由が、よく解りました」
「ここの人間はみんな、イイヤツしかいない。ミチだってそうだろ?」
「はい。人生の先輩として、これからもギンさんに色々と学びたいと思います」
「いいね。弟子ができた気分だ。イチんとこ辞めて、本当に俺の弟子になるか?」
わー、それナイスアイディア!
でも、イチ君が困りそうだね。
「そうしたいのはやまやまですが、一矢様には大きな恩が御座いますので、彼の許可が無い限り、仕事を辞める事はできません。しかし、月に何度か休暇を頂き、グリーンバンブーでも働きたいと思っております」
道弘さんの主人は、絶対にイチ君なんだね。それは、今も昔も変わらないんだ。何だか嬉しくなった。
最初のコメントを投稿しよう!