episode⑪-2

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episode⑪-2

後は、ユンジャへのプレゼントを入れて…と。 私は家でせっせと旅支度をしていた。 最近は月に2,3度はあの世界に行くようになった。 初めて行った時、お城は大変なことに なっていたけれど… ユノたちの活躍のおかげで 元の平和を取り戻している。 ユンジャが実はとても強いヴァンパイアで あることも知った。 ユンジャはなぜかとても心配していたけれど(笑) 私はますますユンジャを好きに なっていくのを感じていた。 ユノの持つ強さと 人や植物を慈しむ優しさを併せ持つユンジャは 日に日に素晴らしい男性に成長しつつある。 そして何よりも私を深く愛してくれる。 私の中でもユンジャのお嫁さんになる 気持ちが固まりつつ、ある。 けれど… もう少し先にしたい、と思ってしまうのは どうしてなんだろう…? ふいに玄関のチャイムが鳴った。 こんな時間に…誰かしら? 「はい…どなたですか?」 「こんばんは、ミサキ」 ユノの声だ…!!! ドアを開けると 白い箱を持ったユノがにっこり笑って立っていた。 「ユノ…!!!」 思わずその胸に飛び込むと、 ぎゅっと抱きしめてくれる。 大好きなユノの深い胸はいつも暖かい。 もう少ししたら私の「おとうさま」に なる人だというのに 目の前のユノはまったく歳を取らないから 「おとうさま」とはどうしても呼べなくて… 「呼び方なんか、何でもいいさ」 あ…心を読まれちゃった(恥) 「どうしたんですか?」 「ミサキがこっちに来ることは知っていたんだが これを先に届けたくてな」 ユノはそう言って白い箱を私に渡す。 箱からは甘い香りがふわりとした。 「あっ、アップルパイ!! ナナコさんのお手製ですね^^」 「ミサキの好物だろう?」 「嬉しい~~~!!今、お茶を入れますね」 ナナコさんの作るお料理はどれも 美味しいし、大好きだけど その中でもアップルパイは格別だ。 お店でもこんなに美味しいアップルパイは 食べたことがない。 ユノの大好きなアールグレイを入れて アップルパイと共にお茶にする。 「これを食べたら俺と一緒に行こうか」 「はい…」 ユノはアールグレイをごくりと飲むと 「ミサキに聞きたいことがある」 「何でしょうか…?」 「向こうの世界に来ることに… 迷いがあるんじゃないのか?」 「え…」 思わずどきりとした。 「何か…やってみたいことがあるのか?」 「自分でもよくわからないんですけど…」 私はそう言いながらアップルパイを口に運んだ。 香ばしいパイ生地が口の中でほろりとこぼれて りんごの上品な甘さがふんわりと広がった。 相変わらずナナコさんのアップルパイは 美味しい…。 「ユンジャのことは大好きです。 ずっと一緒にいたいです」 「うん…」 「でも、まだ私自身が子供のような気がして…。 それと、やってみたいことも…」 「やってみたいこと?」 「ガーデニングは大好きなんですけど フラワーアレンジメントはもっと好きで その仕事をしてみたくて」 「そうか…ミサキらしいな」 そう言ってユノは微笑んだ。 ユノにそう言ってもらえると 勇気が湧いてくるから不思議だ。 「でもユンジャは1日も早く来て欲しいって 思っていますよね…?」 「そこはユンジャとよく話すといい。 あいつは頭ごなしに自分の考えを 押し付けるやつではないだろう?」 「はい…」 「ただ…あんまりミサキが好き過ぎて 片時も離れたくはないみたいだがな」 「そんな…」 思わず顔が赤くなってしまった私は下を向いた。 でも、嬉しかった。 私は本当にユンジャに愛されている…。 「ミサキが一番幸せになる方法を選ぶんだ。 それがユンジャの幸せでもあるんだから」 ユノはそう言って私の頭を優しく撫でた。 ユノは本当に不思議な人だ…。 男性としても父親としても最高の人。 この人の家族になれるだけでも幸せだと思う。 「ミサキは俺の大切な娘だから」 ユノはにっこりと笑うと私を ぎゅっと抱きしめてくれた。
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