episode⑪-4

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episode⑪-4

僕の胸に顔を寄せたまま ミサキは静かに話し始めた。 「ユンジャのお嫁さんになって このお城で暮らすことは私の夢よ…。 でも、まだ私は子供のような気がして…。 もう少し自分を磨く必要があると思うの」 「僕の元でそれはできないの?」 「あのね、ユンジャ…私、 やってみたいことがあって」 「やってみたいこと?」 「この世界に来て、あなたに出会って ガーデニングが大好きになって、 元の世界の学校で勉強をしていくうちに、 フラワーアレンジメントが すごく好きになって…。そのお店を始めてみたいの」 「ミサキの世界で?それは…いつまで…??」 「わからないわ…」 僕はいつまで君を待っていなくてはいけないの? 離れ離れの日々はこれからもずっと…続くの?? 僕はミサキを抱きしめていた腕を ゆっくりとほどいた。 「ユンジャ…?」 少し不安な表情になったミサキの頬に 軽く触れたけど、自分の気持ちのブレを どうすることもできなくて…。 ふいに涙がこみ上げそうになった僕は ミサキにそれを見せたくなくて背を向けた。 「ナナコさんのところに…行く…ね」 僕から拒絶されたと思ったのだろう。 涙声のミサキが部屋を出ていく音がしたけれど 僕は追いかけていくことをしなかった…。     * * * * * *  そろそろ夕食の支度をしなくちゃ。 カナの新しいワンピースを縫いながらナナコは ふいに馬車の音を聞いたような気がした。 「奥様、ミサキ様がお越しになりました」 ハンナが声をかける。 え…?ミサキちゃんが?? どうしたのかしら。今頃はramuさんのお城に いるはずなのに。 エントランスに行くと 馬車から降りてきたミサキは 目を真っ赤に腫らしていた。 「ミサキちゃん…?」 声をかけた途端、泣きながらミサキが ナナコの胸に飛び込んできた。 ユンジャと…ぶつかったのね、きっと。 「いらっしゃい、ミサキちゃん」 「ナナコさん、私…」 泣きじゃくるミサキの髪をゆっくりと撫でながら ナナコは微笑んだ。 「お腹、空いてない?ミサキちゃん」 「え…?」 「今夜はミサキちゃんの好きなものを作ろうかしら。 手伝ってくれる?」 「はい…!!」 泣き笑いの表情になったミサキを見ながら ナナコは、もう1人分多めに作っておかなくちゃ… と思っていた。 ユンジャが必ず迎えにくるはず(笑) 「さあ、着替えてらっしゃい。 ハンナ、ミサキちゃんをお部屋に案内して」 「はい、奥様。 ミサキ様、こちらへどうぞ」 部屋に向かうハンナとミサキを見送ってから ナナコは中庭にいるカナに声をかけた。 「カナ~!!夕食のお手伝いして~」 「はあ~い」 カナの元気な声を聞きながら 今夜は賑やかな食事になりそうだわ…と ナナコは笑った。
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