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episode⑪-5
その日の夕食は賑やかなものになった。
いつもはカナと2人、もしくはユノが来て
3人の夕食だから…。
この前までミカちゃんがいて、
そこにチャンミンさんも加わったりして、
しばらく賑やかな食卓が続いていたせいも
あるかもしれない。
夕方やって来たユノにこの話をしたら、
「じゃあカナの兄弟を作るか」
とか言い出すし(赤面)
…ミサキちゃんはやっぱり元気がない。
ユンジャの元に来ること=ヴァンパイアになることが
原因なのだろう。(気持ちもそう伝わってくる)
若い2人にはまだまだ話す時間がきっと必要だ。
「ナナコさん…」
あまり進まないスプーンの手を止めて、
ミサキちゃんが重い口を開いた。
「私のわがままなんでしょうか…?」
「ユンジャの元に来るのを先延ばしにしたいこと?」
「え…?どうしてそれを??」
「うふふ。一応私もヴァンパイアなのよ。
まだ新米だけれど」
あっ…という顔になったミサキちゃんは
ようやく笑顔になった。
「ナナコさんは迷いはなかったんですか?
その…ヴァンパイアになることとか」
「そうねぇ…なかったかも」
「いいなあ…」
「ミサキちゃんには夢があるから、
そっちの方が羨ましいわ」
「そうでしょうか…」
「そうよ。私なんか元の世界には
絶望しかなかったもの」
私は微笑んでミサキちゃんの頬にそっと触れた。
「ミサキちゃん。ユンジャは決して
わからず屋ではないわ。
ただあなたのことが本当に好きで、好き過ぎて、
ず~っと一緒にいたいだけなのよ」
「え…」
恥ずかしそうに顔を赤らめたミサキちゃんを
本当にかわいいと思った。
「もっとたくさん話しなさい、ミサキちゃん。
ユンジャを大切にしたいって思ってるでしょう?
お互いを分かり合うためにも2人にはたくさんの
コミュニケーションが必要だと思うの」
「はい…」
「今日はゆっくりして、明日はユンジャの所に
戻りましょうね」
「そうします」
「いや…その必要もなさそうだ」
ユノがふっと笑った。
その直後にハンナが声をかけてきた。
「ユンジャ様がお越しです」
そこに現れたのは、思いつめた表情のユンジャ。
「ミサキ…ごめん…」
「ううん、私の方こそ…」
ユンジャがミサキちゃんを愛しそうに
ぎゅっと抱きしめる。
優しいハグに心が…なごむ。
「お2人さん。よろしければ一緒に
ディナーはいかが?」
おどけた私の声に
顔を真っ赤にしてパっと離れる2人。
カナがむじゃきに笑った。
「ユンジャ兄さまもミサキちゃんも
お顔が真っ赤~!」
「こっ、こらっ!カナ!!」
余計に赤くなるユンジャ。
顔はユノにそっくりなのに
中身はもっと純粋で心優しいユンジャは
きっとミサキちゃんを幸せにしてくれるはず。
「そうだな、ナナコ」
私の心を読み取ったユノがそっと私を抱き寄せる。
「あなたの子たち、みんなサイコーよ^^」
私の言葉にユノは笑ってキスをくれた。
「さあ、みんなで食べようか。」
私がこの世で一番愛している人が優しく声をかける。
みんなが笑顔で、こうして食卓を囲むひととき…
ヴァンパイアになることを
ユノのそばにいるということを選んで
本当に良かった…。
そう私は感じていた。
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