episode⑪-6

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episode⑪-6

ユンジャがナナコさんの住む城に来てくれた。 やっぱり…ユンジャと一緒にいたいと強く思う。 私はきっと前よりもっとユンジャのことを 好きになっている…。 一緒に帰ろう、と言うユンジャに 「今夜はここに泊まっていけば? ユンジャの好きなオレンジ入りのババロアを 作ったから、後でお部屋に運ぶわね」 そんな優しいナナコさんの計らいで 今夜はここで一緒に過ごすことになった。 「さ、カナ。この前の本の続きを読みましょうね」 私にじゃれつくカナちゃんを うまく引きはがして(笑) ナナコさんがウインクをすると ユノに肩を抱かれて3人で奥の部屋に行くのを 見送ってから、ユンジャと2人で部屋に向かう。 私の肩をふわりと抱くしぐさは やっぱりユノに似ているけれど ユンジャはもっと繊細で優しい…。 ごめんね…私、またあなたを 傷つけてしまった…よね? 「傷ついてなんかいないよ。心配しないで」 人の心がわかってしまうその能力は 時にあなたを辛くさせてしまうんじゃないの…? ふいにぎゅっと抱きしめられる。 「本当にミサキは優しいね…」 「そんなこと…ないわ」 「いつも僕のそばにいて欲しいと思うのは やっぱり…わがままかな?」 私は本当に幸せだと思う。 ユノに出会うまではどん底の毎日だった。 生きたいのに死ぬことを 考えなければならなかった日々…。 それが今はこんなに大好きな人に愛されて 大切にされて 家族と呼べる人たちもできて 好きなことを勉強できる環境まで もらえている…。 「ユンジャ…」 「ん…?」 「…こんなわがままな私でいいの?」 「え…?」 「ユンジャのお嫁さんに…なってもいいの?」 「ミサキ…でも、やりたい事は??」 驚いたユンジャが私の顔をまっすぐに見つめる。 …きれいな瞳。 どこまでも澄んでいてうそも偽りもない この瞳の持ち主を 生涯愛し抜くと神様に誓おう。 「あなたのそばで始めるわ。…あなたと一緒に」 いきなりユンジャはうお~~~っ!!と 叫び声を上げると 私を抱き上げてぐるぐると回り始めた。 「きゃっっ!!」 思わずユンジャの胸にしがみついた私に キスの雨を降らせる。 「嬉しいよ、ミサキ…!! 僕はどうしようもなく幸せだよ…!!! ああ…神様!!!」 ユンジャは私をそっと降ろすと、 中庭に生えていた、まだつぼみのバラの枝を 1本摘んだ。 そして、私の前で跪き、 そのバラをそっと差し出す。 すると、私の目の前でユンジャの手の中のバラが 見る見るうちにピンク色の花を咲かせた。 「ユンジャ…すごいわ…!」 「ミサキ…僕と結婚してください。 必ず幸せにします…」 「はい…。お受けします」 私はユンジャからそのバラを受け取った。 私の手の中でバラは更に輝くように咲き誇る。 「ミサキ…愛してる…」 ユンジャは優しく私を引き寄せると 更に深く抱きしめた。 …生きていて良かった…。本当にそう思った。 神様… 私にこの人を会わせてくれて 本当にありがとうございます…。 もう…迷いません… 私は…この人と生涯を共にするために ヴァンパイアに…なります。
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