episode⑪-7

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episode⑪-7

翌日、私はユンジャと共に ramuさんの住むお城に戻った。 すると、突然 「ミサキさん、後で私の部屋に 来てもらえるかしら?」 ユンジャのおかあさま、ramuさんに呼ばれた。 ワガママで失礼なことばかりしてしまっている私は きっとお叱りを受けるに違いない。 思えば、ramuさんとちゃんと お話をしたことはなかった。 ユノの最初の奥さんでユノの最愛の人…。 愛するユンジャが最も大切だと考える人…. そして、私のおかあさまに…なる人…。 少し…怖かった。 私は…ramuさんに受け入れて もらえるのだろうか…? 「心配はいらないよ、ミサキ。 かあさまはそんなことで呼んだりはしないから」 ユンジャはそう言って微笑むけれど…。 ramuさんのお部屋に行き、 私はドアの前で軽く深呼吸をした。 少し…ドキドキする。 緊張を隠しきれないまま、 私はドアをゆっくりとノックした。 「はい…」 「ミサキ…です」 「どうぞ、お入りになって」 始めて入るramuさんのお部屋は あちこちにバラが飾られていて、とても美しかった。 ふんわりとバラのいい香りがして 柔らかい色合いのトーンでまとめられた 落ち着きのある趣は ramuさんの人柄そのものだった。 「こちらにどうぞ」 奥のソファをすすめられて、 私は少し身を堅くしながらそっと座った。 「紅茶で…いいかしら?」 「はい…」 バラのジャムが添えられた紅茶はいい香りがした。 「ミサキさんにね、渡したいものがあって…」 ramuさんは優しく微笑むと、 光沢のある白い大きめの箱を私に差し出した。 「開けてみてくれるかしら?」 「はい…」 言われるままにその箱を開けると 中に入っていたのは純白の美しいドレス。 「これは…」 「あまり上手ではないんだけど、私が縫ったの。 ミサキさん…良かったら着てもらえないかしら?」 ramuさんはにっこりと笑って、 そのドレスを取り出すと、私の胸に当てる。 「やっぱり…少し大きいわね。 お直しして、間に合わせましょうね」 「え…?」 「結婚式に間に合うようにお直ししなくてはね」 「結婚式…? 私で…いいんですか?」 「ミサキさん…私もナナコさんも結婚式は あげてないの。だからね、2人にはお式をして もらいたいな…って。どうかしら?」 突然のことで、でもあまりに嬉しくて、幸せで 私は知らないうちに泣いていた。 ramuさんの細い指が私の顔にそっとのびてきて 涙を優しくぬぐってくれる。 「私…こんなに幸せでいいんでしょうか…??」 「当たり前じゃない」 ramuさんは笑ってそっと私を抱き寄せる。 「娘ができて嬉しいわ…。 ミサキさん…私の娘になってくれる?」 「はい… おかあさま…」 ramuさんの胸は柔らかくて暖かかった。 それは、遠い昔の母の記憶が蘇るようで 優しくて安心できる居心地の良さが 私を小さな子供に戻していくような、 そんな気持ちになった。 私は今、本当のおかあさまに出会ったのだと そう思った…。
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