episode⑫-1

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episode⑫-1

「そうです、肥料の配分はそれで大丈夫ですよ」 「ホント?これでうちの庭にも キレイなバラが咲くかしら、トーマス?」 「もちろんですとも、カナ嬢ちゃま」 「やったぁ~!!楽しみだなぁ〜…」 「お庭の手入れが好きなところは ユノ様よりチャンミン様に似てますね、 嬢ちゃまは」 「そう? えへへ」 私はこの頃、ときどきramuかあさまのところに お裁縫を習いに来ている。 でも、どっちかというと その後でトーマスに花のことを 教えてもらう方が好きだ。 トーマスは花のことをなんでも知っていて わかりやすく教えてくれるから楽しいんだもん。 今回もおねだりして、ここのバラの苗木を もらうことになったの。 「カナ嬢ちゃま。バラはどのあたりに 植えるおつもりですか?」 「んとね、フリージアの隣にしようと思うの」 「ああ…あの天使のフリージアの」 「天使? そっか、ミカちゃんのね」 「うちの庭でも元気に育ってますよ。 やっぱり枯れないから不思議なフリージアですね」 「ミカちゃんの力…かなあ…」 「そうですな…」 トーマスはふと思い出したように言った。 「そういえば、チャンミン様はお元気ですか?」 「え…?ここにも来てないの??」 「じゃあ嬢ちゃまのお城にも お見えになってはいないんですか?」 「うん…しばらく来てないよ」 ミサキちゃんの結婚式の後、 チャンミンの姿をしばらく見てはいなかった。 ちょっと…寂しいって思ってた。 「じゃあ・・おそらくあの場所に おいでなのでしょう」 「あの場所って…??」 「チャンミン様は考えることがあると おひとりで行かれる場所があるんですよ」 トーマスはそう言うと、少し遠い目になった。
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