episode⑫-4

1/1
前へ
/47ページ
次へ

episode⑫-4

「おはよう。ご飯できてるよ」 窓から差し込む明るい光と共に 耳元で響く優しい声と、額に降りた 柔らかい唇の感触で私は目を覚ました。 「おはよう…。ご飯作ってくれたの?ユンジャ」 「うん。ミサキ、今日は学校の日でしょ?」 「そっか…ありがと、ユンジャ」 あの世界で本当に幸せな結婚式を挙げて それからの私たちは あの世界とこちらの世界を半々で行き来している。 「やっぱり学校は卒業しなよ、ミサキ」 ユンジャがそう言ってくれて 来年の春まではこの生活が続く。 こうやって一緒に住むようになってわかったことは ユンジャは本当になんでも出来るひとだった… ということ。 お料理もお掃除も日曜大工まで 私以上に完璧にこなせるのだ。 「お嫁さん、必要ないじゃない…」 私が思わずぼそっと言った独り言に 「ん? 何か言った??」 そう言って可愛らしいエプロン姿で 小首をかしげるユンジャを見ていると どちらが新妻だかわからなくなってくる(マジで) しかも朝から見事なキッシュを焼き上げていて それが、メチャメチャ美味しい…(ううう…) 「美味しい??」 「…美味しい…」 「なんか…ミサキ、機嫌が悪いなあ」 くりくりとした瞳で私を覗き込んだユンジャは ふいにチュっとキスをした。 「でも怒った顔もかわいいけど」 あああ…弱い…この攻撃(完敗) 「さあ、食べて、食べて。遅刻しちゃうよ」 「ホントだ…!!いただきま~す」 あわててキッシュを頬張る私を にこにこ顔で見ていたユンジャは 急に真顔になった。 「…そうか。いったん戻るよ」 誰かと交信してる。(おそらくトーマス) ヴァンパイアの能力って…やっぱりすごい。 そして、城主の顔になったユンジャは ものすごくカッコいい…(うっとり) 「お城で何かあったの?」 「城の方じゃないんだけど、今夜一緒に戻ろう」 「どうしたの?」 「チャンミン兄さまが…もうすぐ行ってしまうんだ」 「え…?どこに??」 返事をする代わりにユンジャは私を深く抱きしめる。 「僕たちは寂しいんだけど…。 兄さまはこれで幸せになれるんだ」 その言葉で私はすべてを理解した。 「ミサキも会いたいだろ?兄さまに」 「うん!!」 「だから今夜、戻ろう」 「ええ。」 ユンジャは微笑むと、またふわりとキスをくれる。 「ミサキ…」 「なあに?」 「大好きだよ」 「?どうしたの?」 「なんかさ…僕は幸せだなって思ってさ」 あなたのそんなところが大好きよ、ユンジャ。 そう答える代わりに 私はユンジャの唇に自分からキスをした。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加