episode⑩-4

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episode⑩-4

それからミカは3日3晩高熱を出し続けた。 僕はナナコさんと交代でミカの看病にあたった。 「大丈夫よ、チャンミンさん。傷が大きいから 熱が出ているだけみたい」 この世界に来る前までは看護師をしていた ナナコさんが微笑む。 「そう…なんですね」 「ユノのおかげで傷口も化膿してはいないし、 心配しないで」 背中の傷はまだ生々しかったが 出血はしなくなっているし、 確かに人間より回復力もあるようだった。 けれど… あのもがれた羽根はどうしたらいいんだろう…。 このままではミカは自分の世界に 帰ることが出来ない。 …出来ない…?? 4日目の朝、ようやくミカが目を覚ました。 「チャン…ミン」 「ミカ…!! 大丈夫か??」 「ええ…」 「良かった…」 僕は思わずミカをぎゅっと抱きしめた。 野ばらのような香りが僕を包む。 夢にまで見たミカに…こうして会えるなんて そして、こんなに深く抱きしめることが 出来るなんて…。 「チャンミン…」 「何…?ミカ」 「キス…して」 僕はミカの頬を両手で包むと そっとキスをした。 やっぱり何も起こらない…!! それから僕は夢中でミカに何度もキスをした。 そして、嬉しさと幸せな気持ちに胸が震えた。 その小さな唇を何度も吸い、 舌をゆっくりとミカの口に差し込み、 ミカの舌を絡めるように捉えると あぁ… とミカが小さく喘ぐのが聞こえた。 「夢…を見ているのかな」 「夢じゃないわ…チャンミン」 「ミカ…」 「チャンミン…私を離さないで」 答える代わりに 僕はその愛しい体をぎゅっと強く抱きしめた。 * * * * * * 「ミカ…」 僕の腕の中にいるミカの髪を撫でながら そっと話しかける。 「…なあに?」 「どうして羽根があんなことに…?」 ミカは僕の胸から顔を離すと 僕の目を見ながら微笑んだ。 「チャンミンに会わせて欲しいって… ゼウス様にお願いしたの」 「え…?」 「天使ではいられなくなってもいいのかって 言われたけれど、それでもかまわないって 答えたの」 「だから…羽根をもがれたの??」 ミカはこくりとうなずく。 「そんな…もう天上に戻れなくなって しまうんだぞ??」 「チャンミンに会えないよりはずっとマシだもの」 こんな僕のために命をかけて君は… 僕はミカの心がたまらないほど愛おしかった。 その愛しい体を再び深く抱きしめる。 今度は僕が君を命にかけても守ってみせる…!! もう…離さない。 僕の愛しい人…。 僕たちの思いはひとつなのだと 僕もミカもこの時はそう信じていた。 そう…あんなことが起こるまでは…。
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