episode⑩-6

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episode⑩-6

その夜… 僕は初めてミカを抱いた。 本当はミカの血を吸って、 僕の妻にしたかったけれど ミカの羽根のことを思うと そうしてはいけないような気がした僕は 血を吸うことはせずに 人間の男のようにミカを何度も抱いた。 ミカの体は何もかもが甘かった。 甘くて、やわらかくて、しなやかで… 僕の体に鞣革のように吸い付き、 惑わせ、狂わすような そんなしなやかさがあった。 なめらかなミカの体に幾度となく唇を這わせると 僕の腕の中でミカは何度も甘い声を上げた。 どうしようもなく、ミカを好きだと思った。 そして、ミカの体に溺れていく自分を 止められそうにもなかった。 僕の上で弓のようにのけぞる背中に指を当てると 少し盛り上がった傷に触れた。 天使であるはずのミカが失ってしまった羽根…。 「ミカ…」 僕の声に、荒い息を整えながらミカが僕を見つめた。 「なあに…?チャンミン」 「この羽根を取り戻すためには どうしたらいいんだろう…?」 ミカは驚いたように僕を見て 次の瞬間、その瞳には涙が溢れた。 「チャンミンと永遠に別れると約束したら ゼウス様が戻してくれるわ…」 「そんな…」 「いやよ…いや…。私、チャンミンと別れたくない」 「僕だってミカを離したくなんかない」 僕は思わずミカを抱き寄せた。 僕の腕の中でか細い肩を震わすミカが愛おしかった。 「ごめん、泣かすようなことを言って…」 「チャンミン…お願い、私を離さないで」 「離すもんか…」 僕はミカを更に強く抱きしめた。 ああ…愛している。愛しているんだ…ミカ…。 けれど… この指に触れるミカの背中の傷を思うと 本当にこのままでいいんだろうかと 僕は思わずにはいられなかったんだ…。
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