epilogue わたしの愛するシューベルト

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「そうだ……来週、ネメと行きたいところがあるんだ」 「え?」 「軽井沢のジュエリー工房。たったひとつの……結婚指輪を一緒につくりたいと思って」 「指輪?」  そういえば、結婚指輪のことなどすっかり忘れていた。  わたしの驚いた顔を見て、アキフミが苦笑する。 「いつお前が指輪をねだってくるか、こっちは待っていたのに。入籍してもぜんぜんその気配がないんだものな……まぁ、お前らしいか」 「世界にひとつだけの、指輪をつくるの?」 「ああ。この先ずっと一緒にいられるように、オーダーメイドの結婚指輪を、な」 「なにそれ、すごい嬉しい……!」  パーティーのときに彼が贈ってくれたサファイアが煌めく白銀の蝶の髪飾りもとても気に入っている。  きっと、ふたりでこれからつくる指輪も、素晴らしいものになるだろう。  それは彼方とピアノで弾いたグラン・デュオのように。  わたしたちはこれからも、しあわせな未来を奏でつづけていく――…… “Grand Duo * シューベルトは初恋花嫁を諦めない”――fin.
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