epilogue わたしの愛するシューベルト

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   * * *  わたしとアキフミの婚約が全面的に認められ、スピード入籍したことで紫葉グループの会社全体はお祭り騒ぎのように盛り上がっているらしい。  そこには、アキフミに玉砕したものの舞台で華麗な演奏を見せた多賀宮詩の花婿探しという新たな余興も加わり、詩の標的としてアキフミの双子の弟たちに注目が集まっているんだとか。  詩がアキフミに固執していたのは彼が持っていた肩書だけみたいだから、ほかの会社の若い社長に見初められたらほいほい嫁いでいきそうな気がしないでもない。願わくばこれ以上わたしたちを巻き込まないで素敵な異性と出逢って見えない場所で勝手に幸せになればいい。  とっとと軽井沢に戻ったわたしはその後の騒動など知る由もなく、入籍前と同じように、別荘管理の仕事をしながらピアノとともに穏やかに過ごしている。アキフミも相変わらず軽井沢の屋敷でわたしと一緒に生活しながらリモートで仕事をしつつ、週に一回、日帰りで東京の本社に顔を出すという日々を送っていた。
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