prologue シューベルトの妻

5/28
前へ
/282ページ
次へ
 これ以上弾いてなんかいられない、弾きたくない、それでも弾かずにいられない。何かの中毒みたいに、わたしは鍵盤に指を滑らせ、思い通りにならないメロディをムキになって奏でつづけていた。  ――シューベルトのグラン・デュオを彼と弾くことになった、その日まで。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加