俺が追いかけるキミの足音 【短編】

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 肝心な時に言葉の出ない俺。  ベッドの上に座る亜里沙が、次のクッションを投げようと俺を見据えていた。  窓の外からの雨音は聞こえなくなっている。  雨は、止んでいた。 「雨あがったよ。早く言って」  次のクッションが飛んで来て俺の胸に当たる。  亜里沙の瞳が不安そうに揺れていた。  一緒に居られる時間が少なくて不安なのは同じだったんだ。  強がりでホントは弱い亜里沙。  あの頃から本質は変わっていない。 「亜里沙の気の強いところも好きだよ。ずっと一緒に居たいんだ」  亜里沙は、泣き笑いのような表情を浮かべ 「コータのバカ」  と呟いた。 「買い物に行こう」 「うん」  窓の外の雲が切れ始め、薄日が差し始めていた。      
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加