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肝心な時に言葉の出ない俺。
ベッドの上に座る亜里沙が、次のクッションを投げようと俺を見据えていた。
窓の外からの雨音は聞こえなくなっている。
雨は、止んでいた。
「雨あがったよ。早く言って」
次のクッションが飛んで来て俺の胸に当たる。
亜里沙の瞳が不安そうに揺れていた。
一緒に居られる時間が少なくて不安なのは同じだったんだ。
強がりでホントは弱い亜里沙。
あの頃から本質は変わっていない。
「亜里沙の気の強いところも好きだよ。ずっと一緒に居たいんだ」
亜里沙は、泣き笑いのような表情を浮かべ
「コータのバカ」
と呟いた。
「買い物に行こう」
「うん」
窓の外の雲が切れ始め、薄日が差し始めていた。
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