本当の事は話さない、君が気づくのを「彼」は待っている

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「さようならの前に言わせて欲しいの、別れの餞別にね・・・」         婚約者で女騎士のメルエラに婚約破棄したのは自分からだった。  「貴方は私を嵌めて没落に追い込んだわ、満足かしら? そんなに憎かったのね、私の事が」    違うとは言えない。少なからずその気持ちはあったからだ。         「貴方と訓練していた時期が楽しかったわ、ねえ、覚えてる? 貴方が私に近づいてきた男を貴方が決闘で負かした時の事を」     覚えている。彼が君を好きなのを。そして彼が役目を終えた事も。 「ねえ、覚えてる? 貴方に近づく女や男を全て牽制して生きてきた私を。貴方は捨てるのね? 良いの? それで」 苦々しく思うだがこれしか解放する道が分からなかった。 「・・・幸せにね、私は貴方の事を本当に好きだと思おうとしたわ、けど無理ね。女なんですもの」    そう、自分は双子の兄の死因を探るべく入れ替わった双子の妹だ。         「・・・君を許した訳じゃないよ。君が浮気した兄を殺した事もそして「私」が兄の代わりになり相談する事も。全て見越していたとはね、恐れ入ったよ」  「私は他人にさせますからね、汚れ仕事などごめんだわ」 「それは嘘だ、兄に直接手を下したのは君しかあり得ない。そして兄自身が事故に装う理由は君以外他に居ないんだよ・・・」   メルエラはそれを聞くと顔を上げて驚いていた。だがここから先は教えない。これは私の兄を殺した罰なのだから。これが私が彼女に対する「はなむけ」の言葉だ。        「さようなら、一番じゃなくても特別だったよ」
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