花束

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 私達はあれから数々の逢瀬を繰り返した。  タカシは私の二個年上で、隣町からドライブに来ていたということだった。成宮の一件もあり、そのうち飽きて来なくなるだろうと思っていた。それか、一夏の恋というやつかと思い、タカシにはあまり感情を揺さぶられないようにしていた。  しかし、彼は片道二時間の距離をものともせず、私の元へ足繁く通った。しかし、いつまで経っても告白してくることはなかった。  夏が終わる頃、私は言った。 「もし遊びなら、今日で会うのはやめよう」  精一杯の勇気を込めて言った言葉だった。私はもうこれ以上、タカシに惹かれてしまったら、後戻りできないところに立っていた。 「なんでだよ」  タカシは怒ったようにそう言った。出会った海辺。いつの間にか、かかなくなった汗。時々吹く肌寒い風。どれも何も変わらないつもりでいて、気づけば当たり前に変わっていくものだった。私は永遠が欲しかった。  それからしばらくタカシから連絡はなかった。私は成宮の時以上の喪失感を味わった。ちなみに、成宮は一夏も保たずに奈々とは別れ、晩夏を別の女の子と過ごしているところだった。  もしも、あの時何も言わずにいたのなら、あの時間は永遠とは言わずとも、もう少し続いたのだろうか。そう思わずにはいられなかった。  だから驚いた。秋も暮れる頃、タカシが私の誕生日に、柄にもなく花束を抱えてきたことに。 「付き合おう」 「似合わないよ、ばか」  だから、私は本当の気持ちを素直に言うことができなかった。
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