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「これ、ぼくの友達みんな見てるよ。『プラトーン・チャンネル』っていうんだ」
そう言われて驚いたアリストテレースが木箱のガラス面を見ていると、懐かしい老師の顔がアップになった。
「はーい、プラトーンです。いま水浴したところです。今日は横になって寝る前に、知とは何か議論しようか」
そしてアリストテレースの前で子供が木箱に向かってなにかしゃべると、それを拾ってプラトーンが対話をした。他にも世界中からこの番組にアクセスがあり、様々な質問が投げかけられ、プラトーンの答え方は以前アリストテレースがアカデメイア学園の講義で聴いたそれと同じだった。
「では今夜はこのへんで。このチャンネルはわたしの弟子のアリストテレースという優秀な弟子が作ってくれた装置を応用してお送りしている。アリストテレースのは今一つだったけど、ちょっと改造して、ピタゴラスの天体の音楽調和理論を使って、月に反射させて地球の片面には配信ができているはずだ。こうして教える側と教えられる側が、毎日を一緒に過ごす中で初めて伝えられることがある。わたしは死ぬ前の最後までこのチャンネルを続けるつもりだ。みんな見てくれよ!」
そう言って画面の向こうのプラトーンは眠りについた。
アリストテレースはようやく師の言っていることが理解できた。
そして考えた。自分は師のようには話すのは苦手だ。だけど、もし自分が学校を作る時が来たら、師と弟子が一緒に並んで話しながら歩ける散歩道を学園の庭に作ろうと。
(おわり)
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