代償屋

第一話

「あー、彼女欲しいなあ。」
咳をしても一人。と有名な歌人が歌を残しているが俺も一人だ。

彼女がいない、というのは心の風邪だと俺は思う。

なんか咳が止まらなくても気にしなければ問題はない。
ただ、友人と話すときの話題が止まらない咳のように「彼女が欲しい」としかつぶやくことができないのは情けない。

なんかけだるいのだって別にちょっと気にしなけらばいいだけだ。
だが、このけだるさはいくら栄養を取って寝ても取れやしない。

止まらない鼻水は拭き取ればいい。
ただ、鼻水のようにねばついた性欲を一人でティッシュで拭き取る虚しさはどうにも心をえぐられるものだ。

「こんなもの見ちゃったからなあ」
僕が見たのは漫画原作の恋愛アニメだった。
誰を傷つけるでもなく淡々と業務をこなすサラリーマンが一方的に10歳も年下の派遣社員に好意を持たれる話だった。
後輩女子の春香が健気でかわいかったんだよなあ。

俺もこんな彼女がいたらなあ…。