第一話

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そんな中身のない妄想の世界から現実に引き戻すものが目に入る。 スマホに映る時間だ。 時刻は1:40を示していた。 レポートの提出期限の前日に限ってアニメを一気見してしまう人の割合はいったいいくらほどなんだ? 少なくとも俺のような人のほうが多数派にちがいない。 「…2:00からやろっと。キリが悪いし。」 そう。キリが悪い。キリの良さは効率に比例する。これは俺が怠惰なわけではない。効率を重視しているだけなのだ。 そう決めた後、どうでもいいまとめ記事を読んでいるとふっと出てくる広告記事に触れてしまった。 「うわ、やっちまった…。てか、なんだこれ。代償屋?」 俺はその広告の異質さに目を奪われた。 ほとんどが小さい文字だらけのシンプルな広告から得た代償屋の内容はこうだった。 どうやらこの代償屋は「質屋」のようなものらしい。 自分の「代償」を期限付きで預ける代わりにそれに応じて現金を融資してもらえる。 期限内に決められた現金を返却することができればその「代償」を返してもらうことができるらしい。 期限の切れた代償は質流れとして買い取ることも可能らしい。 その代償ってやつがぼんやりしすぎててわからない。何を支払わされるんだよ…。 歯とか指とか詰めるヤクザの裏取引所か? 「なんだよこれ。あほらし。」 閉じようとした瞬間、事務所の住所が自然と目に入ってしまった。 実在すんのかよ。ていうか国は認めてんのかよ。 「大学の近所の空き地じゃねえか…。まさかな。」 俺は広告を閉じ、レポートに取り掛かることにした。
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