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「ようやく終わった…。」
レポートが終わるころには朝日がもうベランダから差し込んでいた。
ここまで来てしまっては、ひと眠りする余裕もない。
お湯を沸かし、インスタントの味噌汁を飲む。このレポート終わりの一杯が何よりの至福なのだ。
腹ごしらえをおえ、歯を磨き、クローゼットから安物の服を取り繕って僕は大学に向かった。
重たい体、重たい瞼、重たい手。
重たいづくしの体に鞭を打って書いたレジュメへの書き込みはぐちゃぐちゃだ。
休憩時間をいいことに恥を忍んで友人の昂輝にレジュメをお願いすることにした。
今日の授業は重要な公式の解説だったからだ。
「なあ、昂輝。今日のレジュメの書き込み見せてくんね?」
「ああ、いいよ。」
こいつの名前は昂輝。同じ学科の友達だ。
男子高校生のノリをそのまま持ち込んだような工学部のなかで一人異質な雰囲気を放っている。
細身だがしまっている体。きりっとした目つき。自信を感じさせるぴんと伸びた背筋。そして口数が少ない。
あんまりに喋らないものだから一人でいることが多い。
だが、俺はこいつの余計なことを喋らない性格が相性が良かった。
あっちも口数が少ないだけで愛想が悪いわけではないので今もこうして付き合いが続いている。
「悪いなあ。ほんとにありがとう。」
「おう。」
「……」
「……」
沈黙。ほんとにこっちから話しかけないとなんも喋んねえな。
くっだらない話題だけどこっちから振ってみるか。
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