幸せとは不幸の反動の基にあり、不幸とは幸せの反動の基にある1

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記憶 ~ 裏切り 「これならいけるだろ」 俺が言う。 「馬乗りはまじやばいって」 黒岩も反応。 「今時ほんとにいるんだなあんなことする教師なんて」 深夜通話。 今日の話題で持ちきり。 「え、どうするのそれで」 松屋が手順の方法を聞いてくる。 「校長室に出向くか教育委員会だな」 黒岩がそういう。 「まあ公立だからどっちでもいいんじゃね、どのみち両方に話は行く」 室井も助言。  「え?なんで公立だとどっちでもいいの?私立だとどっちが駄目とかあるの?」  松屋がそんな疑問を投げかける。  「わからんけど公立に比べて私立の方が色々その学校の判断でものを進められるから念のためにな。あと原田はこの学校に何年もいるから他の教師たちもおそらく知ってる。大体あんな廊下で大声出してんのに誰一人として他のクラスの担任が止めに来ないことがその証拠だろ」  「確かに」  松屋が納得の反応を見せる。  ん・・?  待てよ  ここで俺はふと気付いたことを言う。  「ならやっぱり学校内であーゆーことが行われるのは初めてじゃないってことだろ。てことは一般生徒にもやってたってこと?」  俺が聞くと、  「それはわからんよ、ほんとはどうなるか実際の目でみたいんだけどねえ」  室井が言う。  室井はまだ実際にどうなうのかに固執してるらしい。この前了承してくれたじゃねえか。  「まあそれはもうほぼ叶わんよ、仕方ない室井、諦めな」  俺が改めて言う。  「ふうむ」  まだ考え込んでいるような反応。  全くこいつは。  「まあそれでいいんじゃね、教育委員会か校長で。もういいなら俺寝るよ」  まだ二時。いつもに比べて二時間ほど早いのに黒岩がそういう。  「そうだな、睡眠は大事だ」  室井もそんなことを言う。  「よく言うよ夜中寝ないんじゃないの」  俺が言うと、  「そう学校で寝る、大事と言っただけで今寝るとは言ってない」  「確かに」  まんまと論破されてしまった。  「まあなら俺も寝ようかな」  松屋もそう言い、俺もまあいいかと思い  「了解、んじゃおやすみ」  「おやすみ~」  「おやすみ~」  「はーい」  挨拶を交わしそれぞれ通話から抜けていく。  軸は午前二時十五分、本来であれば四時過ぎくらいまでやっているため、今日はだいぶ時間が余った感覚になる。  まあ久しぶりに夜中長く眠れるしいいか。  そう思い布団に入る。  しかし寝れない。  なんかわからんが落ちつかないのだ。その理由は俺にもわからない。  一度布団から出て立ち上がる。少し考える。やはりわからない。  もういい寝れなくてもいいから布団でぼーっとしとこう。  そう思い電気を消してもう一度布団に入った。  気付いたら朝六時、いつの間にか寝付けたみたいだ。  昨日のもやもやももうない。ここ最近あまり寝てなかったから疲れたのだろう。  そう自分の中で結論づけ学校に行く支度を始める。 全て済まして六時五十分頃、家を出て俺は昨日の深夜通話の話を今一度思い出す。  報告は教育委員会、証拠は関山が蹴られたこと。突き詰めてくるなら自動的に関山が話すから問題ない。どの方向からでも体罰の条件はしっかり満たしていて、証言もクラスほぼ全員が耳にしている。  改めて思い返してみても不備はない。  大丈夫完璧。  あとは日時と形を決めないとだな。  俺はもう一度頭で確認し、電車に乗った。  学校の昼休み、俺は室井にいよいよの最重要ポイントの話を持ちかける。  「いつにする」  室井は何のことかわかっているようで  「明後日にしよう」  ほう、決めてたのか。そう思い同時に聞く。  「なんで明後日?」  「金曜日だから。どうなるかはわからんが大きな事を起こした次の日に学校は来たくないな」  なるほどな。確かにそれは俺も同感。  「わかった」  俺も承諾する。  「黒岩や松屋には俺が伝えておく」  室井が言う。  明後日なら今日の深夜通話でいいと思うのだが伝えてくれるならそれは助かると思い  「了解」  これにも了解の返事をする。 そして俺も確認する  「当たり前だけを言いに行くのはこの四人でいいな」  俺が言うと  「もちろん」  室井も当たり前と言わんばかりに承諾。  「おけおけ、もう大丈夫だね」  すこしばかり時間のかかる話だと思っていたが室井と俺の行動と決断の早さも相まっ てすんなり決まった。  まあ今考えればそりゃすんなり決まるはずだったよ。  当たり前だった。  六限目が終わり五分後に帰りのホームルーム。  俺は教材をカバンにいれ、忘れ物がないかチェックし席に座る。  それが全て終わったところで  ガラガラガラガラ  「はーい席座って今日はやること少し早く終わったのと先生もやることあるから早めに初めて少し早く帰ろうぜ」  珍しい。遅れることがない代わりに早いこともなかった原田が三分も早くきた。  まあ三分とはいえ早く帰れるなそれに越したことはない。  「ええまずプリント、これはお前たちのな、保護者のじゃないからな。ちゃんと読んどけよ」  「次にもうひとつ口頭で連絡。昨日の夜に不審者が近くで出たんだって。まだ明るいが帰り道女子は特に気を付けろよな」  「あーあと野球部、今日俺多分かなりお遅くなるからいつものアップやって、俺が来るまで自主練しといて」  いつもに比べやけに連絡事項が多いが着々とこなしていく原田。  俺はそんな姿を見ながら考える。  明後日か。この怪物はどんな顔をするんだろうな。そもそも自分音してることがやばい自覚はあるのだろうか。 まあ明後日に全てがわかる。原田の真意も過去も。気持ちも、処分も。 そんなことを考えながらぼーっとしてると 「笛先、放課後残って」 ・・・ん? 俺呼ばれた?なんで?なんか係とかあったっけ。いきなりの指名にびっっくりして固まりながら 「俺ですか?」 もう一度確認してみる。 「そう、残って」 やはり聞き間違えではないらしい。よくわからんがまあいいか。 「わかりました」 了解の返事をする。 「えーっと連絡は以上かな。今日のプリントは保護者じゃなくてお前らので読めばわかるから説明はしないぞ。あともう一度言うが不審者な。なるべく寄り道せず、暗くなる前に帰ること、以上号令」 そして号令が交わされる。 「せんせいじゃあね~」 「はいさよなら」 クラスの女子が教室を出口でそんな陽気な感じで挨拶をし、原田も答える。こうしてる時は普通に紳士感のある教師なんだがな。 残ってみんなが帰るのを待たされている俺はそんあ姿を眺めながらそんな風に思った。 しかしなんで残らされているのかはまじでわからん。しかも俺だけ。謎すぎる。 あまりのも理解できないため俺はもう半ば考えるのを放棄して脳死で待っていた。 次々と生徒たちが出て行きついに教室内には俺と原田だけになった。 さあなにを話されるのかと待っていると 「よしいくぞ、ついてこい」 命令口調でそう言われた。 ただそんなことよりも え?どこで?俺はそんな真っ当な疑問を原谷投げかけたかったがやめた。 なぜなら全く理由はわからんが今の原田の口調で少なくとも委員会とか係とかそのような事務的なことで残されたわけではなく、本来残されるはずじゃなかったことで残されたことを確信したからだ。 つまりそれは何かしら俺がやらかしたということ。そして今機嫌は良くなく、俺に命令口調という形で少しばかりの怒りの片鱗を見せた。 こういうときは不必要に質問や異論は唱えない方がいい。ましてや今はついてこいとしか言われてないのだからここでわざわざ地雷を踏むリスクを冒す必要はない。 「はい」 俺は湧いてきた疑問を押し殺し、一言返事をして従うことにした。 そして数分後原谷連れてこられた場所を見てさらに疑問を混乱が頭を埋める。 生徒指導室。 俺に認識では何かしらの問題の起こした生徒などがここに連れてこられ個別で指導を受ける。指導と言ってもここでの意味は怒られると同義と解釈している。 そんなところへなぜ俺が。しかも放課後。まじで心当たりがなさ過ぎる。 全くないわけではないがそう考えると俺だけ呼ばれた意味がわからない。 「入れ」 「はい」 原田に命じられ俺はまたも素直に従い中に入る。 そこには会議の差違に使われるような机に、向かい合うように椅子が一つずつ対照的に設置されていた。 「お前はそっち」 原田に俺の座る椅子を伝えられる。 俺は鞄を置き、椅子の横に立ち、一言 「座ってもよろしいですか?」 許可を取る。原田は今確実に何かしらの怒りを俺に向けている。 経験則上だが怒っているとき原田のようなタイプはその事柄以外のことにもより感覚が鋭敏になり、何かしらの礼儀や作法を間違えればそこから火の粉が飛んでくる可能性がある。そうなればさらに面倒。ここは慎重に行く。 「いいよ」 強化が出る。 「失礼します」 その一言と同時に席に着く。 中学時代の野球部での常識になぞらえて慎重にことを進めていく。 そして早速原田が本題を切り出してくる。 「お前が今日呼ばれた理由はわかるよな?」 原田があのときと同じような目で圧をかけるように聞いてくる。 「え?」 はい??わかるわけねえだろ。 予想外の切り出しに思わず俺は良くない反応をしてしまう。 「え?じゃなくてわかるよなっていってんの」 原田の口調がさらに強まる。 もはや聞いてんのじゃなくていってんのって言ってるし。 もうほんと意味わからん。 しかしそれでもここは中途半端などっちつかずな反応をしてるのが一番やばい。 原田はわかるよなって俺に言ってきた。 つまりそれは裏を返せば同時に原田自身も把握していると言うこと。 怒られるときによくある、事の経緯から説明によって確認という段階は今回においては存在しないのだ。 つまりこれほぼ怒るために呼び出されたに等しいと言うこと。 ここははっきり答える。 「ほんとにすみません、今のところ原田先生にそう言われて、ぱっと思いつけるようなことは僕の中にありませんすみません」 俺ははっきり言うと同時に少しのテクニックを加える。 本来であれば、大変申し訳ないのですが先生の仰っていることに今のところ心当たりはございません、と言うのが、目上の相手には正しい物言いなのだと思うが、ここは敢えて少し敬語を崩す。 原田が本当に怒るためだけに呼び出したのなら今ももう怒りたいに決まってる。 そして俺がここに来たときにはもう椅子や机は配置されていた。この大きな机に一つずつ椅子を置くとは思えないし、この部屋の隅にも椅子が二個重ねられていることから本来二個ずつ置いてあった可能性が高いと言うこと。となるとこの部屋は今のために作られた可能性が高く、準備はもっと早い段階から行われていて、原田がいつもよりホームルームにくることが早かったことも踏まえると六限目終了後に急いで準備したとも考えにくい。 ホームルームの最中や俺らが向かう直前に他の先生にやらせた可能性もあるがそれなら電気がついていたり、来るときに誰か別の先生とすれ違ったっておかしくないがそれもなかった。であればこの準備はそれよりもっと前から進められていて、原田は今日の帰り際とかではなくもっと前から事情を把握していて俺をここに連れてくる気だったと考えるのが妥当だろう。 そうなればその時に自分は今にも怒り爆発寸前なのにその今から怒ろうとしている相手は呑気に冷静にものを言っていると思わせたら無性な理不尽な怒りだって湧きかねない。 そのためわざと少し敬語を崩したり、すみませんを二回言ったりと、ほんとにわからなくてそれでも必死になっているという感じを見せることで少しでも沸騰の可能性を防ぐ手段を取った。 すると原田は 「ほんとにわからないのか!ふーーん、自分で言ったことなのにか」 嫌みったらしくそんな風に言ってくる。 ただそれと同時に引っかかる。 いったこと・・・。 少し見えてきた。 まさかとは思っていたが言ったこととはっきり言われてしまって、特に俺は思い当たる限りでは大きなやらかしをしていないことから思い当たるのはあれしかない。 そして・・・。 「まあいいや、お前が本当に心あたりないのはわかんなくねえわ。まさか俺に聞かれるとは思わないもんな」 そういわれてさらに俺の予想は鮮明なものとなっていく。 「じゃあ教えてやるよ。お前と同じクラス、俺のクラスでもある一年六組のある生徒たちからさ」 そしてできれば聞きたくなかった、考えたくなかった事実が。 「お前が笛先が~~~~」 やはりな。そういうことか。 俺は心の中で笑ってしまう。もう呆れの笑いだ。全てに呆れる。そして自分の馬鹿さに。 だがこうなれば仕方ない。 俺は吹っ切れて覚悟を決める。 わんちゃんあるかもしれないし仮になくともおそらく父親のバットの方が痛いはずだ。 「これは事実か?あ?」  今にも爆発しそうな原田にさらに問い詰められる。 ここで俺もさらに存在する事実を言ってもいいがそれは俺にとってメリットはない。   事態は好転しないのだ。先延ばしかダメージ緩和なだけ。 それはメリットとは言わない。  あとはこの際もう原田と一対一の方がいい。  俺は隠すことなく逃げることなく正直に答える。  「はい、言いました」  ふーんといって原田が立ち上がる。  「お前がこの学校に入学させてもらって、教えてもらう立場、勉強させてもらう立場だっていうのに理由はわかんねえけど担任に向かってあんなこと言うの?ねえ?ん??」  そういって向こうの机からこちら回り込もうと歩みを進める。  すぐそれかよ。やっぱ野球部とか関係ねえんだな。  俺は逃げない。暴力は怖い。俺はこの世で最も痛いのが苦手なのだ。すごく怖い。  だが逃げない。  「ん?なに??お前立場わかってるの???」  あの怒りが最大限まで達すると一周回って口調が少しやわらかくなる現象を引き起こしながら原田はそういって俺の胸ぐらに手を伸ばす。  「お前覚悟は出来てんだろうなあ」  本格的に倒す姿勢を整える。  俺はこんなの絶対に認めない。  力でなんとかする世界、それをだめと一般的に言われているにも関わらず面倒ごとを避けてか見て見ぬふりをしてきた他の大人たち。  大人はなんでもそう。  今回の事に関してだけじゃなく、子供に自分の癒合のいいことしか言わない。それをあたかも自分が正しいと、お前のためと正当化して、結局は自分の利益のため。  世の中みんなそう。逆に言えばそれが世間一般的なマナーとして悪いことだとしても自分に不利益がなきゃ動かない。  まあ俺もそうだけど。  少なくとも、少なくとも、こうやって力で、圧で、恐怖で話し合うこともせず押し通そうとするゴミ以下の存在より俺はマシだろう。  そして俺は俺自身のためにゴミ以下の存在から自分を守る・    「そういうところですよ!!!!!!!」  俺は力一杯の声でそう叫ぶ。  俺を床に倒そうとした原田が止まる。  俺は続ける。  「それですよ!!!わかりますか???あなたはなぜすぐそう暴力に頼り、力で解決しようとするんですか!」  原田が目を見開く、俺の胸ぐらを掴んだまままだ止まっている。  すぐ近くに原田の顔があり、少しばかりの恐怖は感じるが俺はそれさえもかき消すようにまだまだ続ける。  「あなたさっきなんて言いました?理由はわからねえけどって言いましたよね!?ならなんでまず理由を聞こうとしないんですか?なんで生徒にそんな異質なことを言われるか考えようとしないんですか?言われてむかついたから、行動にむかついたから、そしたらすぐ暴力ですか??あなたそれ小学生や幼稚生のレベルですよ!!!」  原田の手が緩む。しかしまだ離さない。俺から離れれば離すかもしれないが敢えて俺からは離れない。  少し声を落としてさらに続ける。  「あなたが今俺にやろうとしてる行為、あの日関山にやった行為、世間一般的になんて言うか知ってますか?」  「・・・」  原田は黙っているがおそらくは何を言われるかわかっているだろう。  「体罰ですよ。体罰」  俺は声量は落としたもののはっきりと力を込めた声でそういう。  それを聞いて見開いていた原田の目が元の大きさに戻り、ゆっくりと俺の手から離れていく。  「あなたのこれまでやってきた行為は教師として許されざるべき行為。一番教師がやってはいけないことなんですよ。だから俺はあの日関山にやったことを見て関山に聞きに行って蹴られたと教えてもらい、身の危険と、俺は理不尽なことが大っ嫌いなので警察にだろうと校長にだろうと、教育委員会にだろうと報告してそれ相応の処分受けてもらおうと思いました。ただその中でも俺に多様の落ち度があるとすれば、クラスの連中とわざわざ口に出して話し、問題の種を作るのではなく、先生に直接話すべきでした。しかしそれ以外俺は間違っているとは思いません」  言い切った。怖かったが勇気を出して。余計沸騰して手が付けられなくなる可能性もあったがそれならそれでもう教師を続けられなくなるまで事後処理を行うつもりだったし、やはり素手ではバットには及ばないだろうという考えだった。  しかし原田は逆上することなく、殴ろうとした手を止め、結果俺に暴力を振るわなかった。  そして原田が口を開く。  「そうだな、確かにそうだよ笛坂。お前ほどはっきり言ってくるやつは教師も生徒も全部含めてお前が初めてだよ。確かに異常なことをしているという自覚がなかったわけじゃない。ただどうしても怒ると昔俺がされてきた教育の昔ながらのやり方になってしまってたんだよ」  さっきを勢いはとうに消え失せ、いつの間にか表情も穏やかになり立ち尽くしながらそういう。  「だからといってやって言い理由にはなりませんけどね」  しかし俺は逃がさない。そんな冷静になったって甘やかさない。  こんな野蛮なやつ。  しかしなんというか・・・。  「わかってるよ、もうやらないよ絶対に」  「信じられませんね、逆上したらまた理性失ってやってしまうんじゃないですか?」  「いやない」  「証拠は」  ここまでの怪物教師がたった一度の出来事で金輪際暴力を振るわないなんて到底信じられない話だった。だから今度は更に俺が問い詰めた。  「証拠か、わかった明日持ってくるよ」  「はい?」  証拠を明日持ってくる?  意味がわからなかった。  というかそれ以前に  「そもそも俺あなたを訴えるつもりで今回もされそうになって、なんでまだチャンスがあると勝手に思ってるんですか」  俺は目を逸らし俯きながらそう言う。  なんというか、原田は入学してから初めて見る表情をしている。笑っているところは見たことあるし、常に真顔って訳でもないから、少しの笑った表情くらいはみたこともあるのだが。  「わかった、明日お前、笛先に誓約書を拇印付きで渡す」  「え?」  「俺が次ぎ暴力を振るった確かな状況になればそれを校長先生のところまで持って行ってくれ」  こんなことを言い出す。  「これならどうだ」  本気なのかこいつは。  もし間違えてでもふるってしまえば職を失うし、教師という職に戻るのだって難しくなる。  そこまでの覚悟と確信があるのか?  この野蛮人が?  でも表情を見ると全くでたらめを言っているようにも思えない。  まあ拇印を別の人に付けさせて持ってくると言うことも出来なくはないし。  また俺が馬鹿なのかな。  いやまあ馬鹿ではないわ今回は。  もしもの時はどんな手を使ってでも処分させてやればいい。  その時までは。  そんな風に考える。  「わかりました、明日放課後受け取りに行きます」  原田はほっと一息つき、  「了解」  そう返事をした。  そして互いに準備をして生徒指導室をでる。  「さよなら」  俺は返さない。  今日ばかりは無視していいだろう。  そうしてもうすっかり日が落ちかけている外に出て空を見上げる。  原田とはまさかの展開で幕を閉じた。  だが  「俺は結局いつもこうか・・・」  それと同時に新しい問題が発生した。    「お前が笛先が原田先生のことを消すって言ってたって報告を受けたんだよ」  原田から明かされた一言。  俺は消すなんて発言をした人物は限られているし、そもそもクラスの連中には俺が関山に質問したところくらいしか見られていない。  となれば誰が報告をしたのか。  特に考えずとも答えは出る。  とりあえず明日だな。  明日になれば全てがわかる  今日の夜中の深夜通話は行かないことにしよう。  もっとも俺のでれる環境下で行われるとも思えんが。  「気晴らしに帰ったら温泉でもいくか」  俺は一人で小さく呟き、帰りのバスへ乗った。
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