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「俺、パンダっぽい?」
こてりと首を傾げて問うと、何故だか、目を逸らされた。
「うん。あざとっぽさがパンダっぽい。あと、服ね」
言われて、自分の服装へと視線を落とす。白Tシャツに、黒のパンツという、至ってシンプルな格好だが、なるほど、確かに色合いはパンダだった。
正午の照り付ける太陽の元、2人して笑い合っていると、ポケットの中のスマホが振動を繰り返す。
画面には、いつもはあまり表示されることのない、父の名前が出ていた。思わず身構える。
「電話、出ないの?」
美雪に促され、俺は、恐る恐る通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。
“美空が、何者かに刺された”
電話口で、確かに父はそう言った。
体が震え出す。なんだこの既視感は。俺は、このとてつもない恐怖を知っている。
震える自身の体を抱きしめつつ、ギュッと目を瞑った。途端に、頭の中に美穂の甲高い声が響く。
“あたしを受け入れない、あなたが悪いのよ!”
美穂の狂気に満ちた顔が、脳裏いっぱいに広がる。
そうだ。あの電話を聞いたとき、確かに美穂がいた。狂気に満ちた笑い声を響かせる美穂が、俺の側にいんだ。
何故だ。何故、同じことが繰り返されているんだ。……いや、待て。同じことが繰り返す……?
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