初めての対象者 美穂

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 次第に遠のく意識の向こう側で、美穂の耳障りな声が聞こえる。 「それじゃ、また向こうでね。ああ、リープのし過ぎには気をつけて。たまに、体質に合わない人がいるみたいなの。目の周りに、パンダのようなクマが出始めたら、命に関わるから。あたしだって、あなたに死なれたら悲しいもの」  決して、悲しそうに聞こえない美穂の声がだんだんと小さくなる。 「タイムリープを解除できるのは、両想いの相手とのキスだけよ。だから、次こそは、あたしを見て……」  小さく消えいりそうな美穂の言葉で、俺の胸に浮かんだのは、やはり、美空の笑顔だった。  俺が両想いになりたい相手は、妹の美空だ。  父さんが再婚した時、母さんに連れられてきた美空は、とにかく可愛かった。俺に向けられた溌溂(はつらつ)とした笑顔が眩しかった。それから、ずっと俺の心を掴んで離さない、妹。  小さな美空は、食べてしまいたいくらいに可愛くて、本能に忠実だった子供の俺は、美空の唇に吸い付いた。  今でも忘れない。  でも、もう今は、そんなこと、できるわけがない。  美空が、俺の妹である限り……
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