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だが、俺は、美桜に対しては、全く恋心を抱いていない。美桜の心を弄ぶようで、本当は心苦しい。だから、できれば、美桜を傷つける事なく、俺の目的が達成される事を願うばかりだ。
時刻は10時半を少し過ぎたあたり。
事が起こるにはまだ時間もある。美桜は知らないとはいえ、俺の身勝手に巻き込んでしまうのだ。少しは、美桜にいい思い出を作ってもらおう。
「じゃあ、行こうか」
俺は2人分の入園券を購入すると、美桜を園内へと誘った。
「すみません。入園料お支払いします!」
小走りに駆け、俺の横へと並んだ美桜は、ハンドバッグを開けると、財布を取り出す。しかし、俺は、それをなるべく爽やかに見える笑顔で制した。
「これくらいいいよ。今日は、俺が誘ったんだから。気にしないで」
「でも……」
困惑顔の美桜は、どうすれば良いのかと、財布を仕舞わずに、オロオロとする。きっと、こういう事に慣れていないのだろう。そんな態度が初々しく、美桜に対して、恋心など無くとも、ついつい口元が緩んでしまう。
「本当にいいよ。気にしないで。たくさん楽しんでくれれば、それでいいから」
「……分かりました」
美桜は、渋々という感じで頷き、財布をハンドバッグへと仕舞う。
それから、美桜は少し言いづらそうに口を開いた。
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