2人目の対象者 美雪

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2人目の対象者 美雪

 あいつが、何者かに刺された。  俺は、そう父から連絡を受けたはずだ。急いであいつの元へ向かわなければいけないのに、なぜ俺は、こんな所にいるんだ?  ぼんやりとする頭のまま、空を見上げた。何にも遮られることのない眩しすぎる太陽に、目を瞑る。途端に、美穂の顔が思い出された。  そうだ。美穂だ。美穂が側にいたはずだ。俺は目を開け、辺りを見廻すが、誰もいない。  勘違いか。現実感が感じられない奇妙な感覚に、首を傾げる。何故だか、唇がビリリと痺れた気がした。  唇に指を当て、その痺れを確かめようとした、その時、背後で自動扉の開く音がした。  そのまま振り向くと、店から出てきた美雪とバッチリ目があった。 「ぶはッ!! 何、そのポーズ! 萌え狙い?」  美雪は、俺を見るなり思いっきり吹き出しながら側へやってきて、俺の肩をパシパシと叩く。 「えっ? あ〜、いや。なんか、唇が痺れて……」  俺は、突然の美雪の登場に目を瞬きつつ、それとなく会話を合わせる。  美雪は、同い年の幼馴染で、良く一緒に遊ぶ仲なので、気心は知れている。いつもなら、天真爛漫なこの美雪の態度に合わせて、俺も弾けるのだが、今は、どうにも、自分の中の感覚がぼんやりとしていて、美雪のテンションに合わせられない。
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