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真っ暗な真夜中は静かで誰にも邪魔されない自分だけの時間だから好きだ。
家族が寝静まって家事に追われることもないこのゆったりとした時間にとても癒されるのだ。
紅茶を淹れて読みたかった小説を読んでコンビニで買ったティラミスを食べて。
これから過ごす自由な時間を想像して思わず頬が緩む。
真夜中にティラミス。
罪なことなはずなのに、どこかスリルも感じている。
これが真夜中のなせる技か。
ティラミスと紅茶を食したら、ずっと読みたかった小説に手をつける。
このなんとも甘美で潤沢な時間を封じ込められたらいいのに。
さて、紅茶とティラミスのおかわりをするか。
紅茶をティーカップに注ごうとしたら、夫が『なんかいいニオイするねー』っていいながら現れた。
『起こしちゃった?』
『いや、たまたま目が覚めただけだから気にしないで』
『それよりさー、君だけこんなおいしい時間過ごすのなんかずるい』
夫はティラミスを食べたそうに見つめている。
もう、しかたない人。
『しかたないから仲間に入れたげるわ』
そういうと、夫は目を輝かせた。
『このティラミス、美味しいね~』
夫はしあわせそうな顔でティラミスをほおばっている。
夫は、ティラミスが好きなのだ。
そして、我が家のティラミス好きといえば、もうひとりがいるのだが。
『パパ、ママ、なにしてるの?』
娘は眠たそうな目を擦りながらそう聞いた。
すると、パパは悪戯っ子のようにニヤリと笑いながら『真夜中のティーパーティー!』といった。
娘も目を輝かせて『わたしも参加したーい!』とはしゃいだ。
しかたないなぁ。
起こした私たちが悪いし、参加させるか。
そういうと、娘は両手を万歳にして喜んだ。
『ティラミス、おいひい~』
娘は父以上にうっとりしながらティラミスをほおばっていた。
『ほんとに父と娘は似るのねー』
思わず感心していたら、夫がキョトンとした顔で『何いってんの。家族なんだから、全員似てるよ』といった。
『似てるから、こんな真夜中にティラミス食べてるんでしょ』と付け足して。
それもそっか。
似てるからこんな真夜中にティラミス食べてるって思うと、やっぱり家族が揃っているのが一番だって思えた。
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