【episode2】溺れる恋

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【episode2】溺れる恋

現在まで50の職務を経験した。 ご縁のあった男性の数はカウントをしたことがないのでわからない。 だが、ひとつだけはっきりと理解(わかって)いることがある。 それは、それぞれの仕事や恋と向き合った時間とご縁の全てが宝物だということだ。 インテリアの仕事をしていた時には、寝ても覚めてもショップディスプレーのデッサンを描いていた。 アパレルの仕事をしていた時には、マネキン買いしていただけるコーディネートをいくつも考えた。 講師の仕事をしていた時には、拘束時間度外視で授業後にも生徒の質問に答え励まし導いた。 太宰治がそうであったように、恋だって真剣である。 互いの肌に触れ合った10代から60代までの彼らは全て私の大切な恋人達だ。 それぞれと過ごした時間は私を充した。その快感という泉から抜け出ることなど到底出来るはずもない。 太宰が溺れた恋という湖に、私も自ら入水(じゅすい)したのである。
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