忘れはしない

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▽▽▽ 妹と一緒に外出している。 母はあとで合流することになっている。またゲームを買いにきていた。 「おねぇとだけの買い物なんて最悪」 私は何と答えていいかわからずに黙った。 選択肢が多過ぎて、どれを選んだら良いかわからなかったのもある。 妹がほんの少しだけ距離を置く。 私は何を言うわけでもなく、目当てのコーナーへと向かうことにした。 何点ものゲームソフトが置かれている。 その中でも一番、気に入っているジャンルへと目をやった。 並べられている作品を左から順に眺めていく。 気になるタイトルがあれば、手に取る。 大体のあらすじを見ては、どこか気に食わず元の場所に戻していく。 それを何回か繰り返した。   「あ」 お気に入りの会社から出ているシリーズのファンディスクを発見する。 妹が私の手元を覗き込んで、あからさまに嫌そうな顔をした。 「似ていると思わない?」 パッケージに描かれている少年を指差しながら言う。 「悪趣味」 それだけを言うと、また離れていった。 「似ているよね」 黒髪の少年は弟にとてもよく似ている。 まん丸の瞳なんか特に。 ゲームソフトをもって、そのままレジに向かう。今日は良い買い物をした。 弟は享年十二歳だった。 名前を陽斗(はると)という。 彼が亡くなる直前に、私たち姉妹は陽斗と一緒に川で遊んでいた。 三年前のことだった。今にも雨が振り出しそうな空の日だった。 水切りや石を積み上げたりして遊んでいた。 もうすぐ中学三年生になる私にはつまらない時間だった。 二人を勝手に遊ばせて、自分はスマホを弄っていた。
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