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◇どんだけ*浩人
18時まで隣で黙ったまま本を読んで。
一緒に図書室を出て、下駄箱に向かった。
何も話す言葉が、浮かばなくて。
ただ並んで歩いてるだけ。
駅まで一緒に歩いたけど、何も、話さなかった。
普通、そんな事、しない。
――――……でも、話さなくても、なんとなく、良いかなと思った。
方向が逆だったから、改札で別れた。
「また明日ね、桜木」
「――――……ん」
「これ、読み終わってくるから」
言うと、類が、頷いた。
何だか、フワフワしながら帰って、本を読み終えた。
――――……何だろな、この気持ち。
類と、並んで歩いた。
話もしないで。それだけなのに。
笑って欲しいと思った、その笑顔が見れた訳でもないのに。
なんか、幸せな感じ。
――――……なんでだろ。
風呂に入って、夕飯を食べて、借りてきた本を、読んだ。
読みやすくて、面白かった。
簡単な本を選んでくれたのかも。
簡単にあらすじを言うなら、主人公が限りなく前向きなキャラで、日々起こる問題を周りの仲間たちと解決してく、物語。
――――……ふうん。
こういう話が好きなんだ。
……なんか、ちょっと意外。
そう思って、ふ、と笑ってしまったその瞬間。
自分の内面を見せるみたいで嫌だと言った類の言葉がよみがえった。
ああ…そういう事か。
……なんか今、分かった気がした。
じゃあ、類の一番好きな本って。
これより意外って事だよな。
――――……んー。
すげー知りたいかも。
いつか、教えてくれるかな……。
読み終えた本を閉じる。
――――……読んだよ、と今すぐにでも送りたいけど。
類の連絡先は聞けていない。
教えてくれないだろうなーと思って、聞いてない。
――――……まず、そこからだな。
学校から帰ったらもう関係ない、他人じゃなくて。
――――……学校関係なく、類の世界に、オレが入れるように。
んー。
でも。
ほんと頑なだからなあ……。
ぴこん、とスマホが鳴った。
今日バスケ部の体験に行った友達から。
『面白かったぞ、バスケ部。浩人はいつ体験すんの?』
「体験、来週中でいいんだろ? 来週後半とかに行く」
『何で? 他のとこも見るの?』
「まあ色々忙しくて」
『早く入った方が先輩の受けもいいだろ。早く来いよー』
「了解」
了解、と言いながら、まだ行く気はない。
バスケ部に入ってしまったら、図書室なんか行ってられない。
部活体験が結構長くて良かった。
大好きなバスケよりも。
類のが気になるって。
変なの、とも思うけど。
バスケは来週からでも間に合うけど。
せっかく今日、隣に歩く事、拒否られなかったから。
――――……距離、置きたくないんだよなー…。
ほんと。オレ。
――――……どんだけ、類、かな。
(2021/7/27)
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