◇決めた*浩人

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◇決めた*浩人

 ――――……っ。  涙が。  不意に、滲んだ。  中学ん時。そばに居たら。  絶対、そんな事、させなかったのに。  そんな噂流されて、好きだった奴とも絶縁状態で、遠巻きに見られるなんて。そんなこと、絶対、させなかったのに。  何でオレ、類の側に居なかったんだろ。  くっそ。  ――――……ほんと。意味、わかんねえ。  オレが離れたとか。噂されて。そのせいで、類の昔の話が出てきたとか。  噂なんて。  ……しかも昔の噂なんて、どーでもいいけど。  そうじゃない。  もしかして――――……類にとって、  そいつらと、今どうしていいか分からなくて離れてたオレと。  一緒なのか?  滲んだ涙を拭い去ってから、保健室のドアを開けた。 「……失礼します、1年の佐原です。腹痛いから寝かせてください」 「はーい。腹痛って、下痢?」 「寝てれば治りそうです」 「熱はありそう?」 「全く」 「寝不足だったりする?」 「いえ」 「うーん……ま、いいか。少し横になって、治ればいいし」 「ありがとうございます」  言って、ベッドに入って、横になった。  ――――……馬鹿か、オレ。何泣いてんだ。  つか、泣くなんて、ガキん時以来……。情けねえな。  とにかく、落ち着け。  中学の時居られなかった事、嘆いたって仕方ない。  ……これから何をすべきか、だ。 「――――……」  さっき目があった時。  ――――……なんだか、もう。    抱き締めてしまいたかった。  お前の事が好きだから、ずっと側に居るからって。  言いたかった。  類。  ――――……オレ、お前が好き。  クラスメートとしてだけじゃなくて。  ……多分、どんな意味でも、好き。  その存在が。  すげえ、好き。  見た時から好きで。  なんか、つんつんしてるのも可愛くて。  ちら、と見られるのも、可愛いし。  少しだけ返事をしてくれるのも嬉しくて。  もっと長く話してくれたらいいのにと、焦がれて。  気になってちらっと見る癖に、すぐ逸らして。  近くなりそうになったから、きっとオレのことを離れさせようとしたんだろうけど。  オレに迷惑かかるとでも、思ったのか?  絡まない方がいいとか。そんなの。  ……そんな、どうでもいい理由で。離れるとか。  意味が分かんねえし。 ◇ ◇ ◇ ◇    3時間目をさぼって、4時間目の前に、教室に戻った。  さっき話してた奴らが、悪かった、と言ってくる。  ほんと。良い奴が多いよな、このクラス。  たわいもない噂話に、急にマジで反応して。オレの態度もなかなかに最悪だったと思うので、態度悪かった、ごめん、と謝った。  4時間目。  窓際後ろから2番目の類。オレは廊下側から2列目の、後ろから4番目。  少しだけ、窓の方を振り返ると、類が見える。  少しの間見つめていると。  視線に気づいたらしい類が、ふ、とこちらを見て。  オレと目が合うと。数秒。見つめあった。  何回か瞬きをした類は、ふ、と窓の方を向いてしまう。  ――――……オレの事が嫌いだっていうなら、近寄らないけど。  多分そうじゃない。  ……嫌いじゃないなら。  もう、決めた。  (2021/8/6)  
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