◇告白

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◇告白

 やっと、放課後になった。   「オレ今日、体調不良。部活休むって、先輩に伝えといて」 「どこが体調悪いの? 元気そうだけど」 「心」 「……あー……ん。分かった。 病んでんのは、よく分かった」  新太が、眉を顰めて、オレを見つめてる。 「じゃあ今日は、ものすごく具合が悪そうだったって言っとくから」 「ん、頼む」  とりあえず、部活は、さぼり決定。  ――――……よし。  鞄を持って、図書室に向かった。  図書室に居なかったら、どうしようと思いながら、向かうと。  居た。  良かった。 「……類」  初めて、口に出して、類、と呼んだ。  咄嗟に顔を上げてオレを見て――――……類は、眉を顰めて、また本に向いた。  まわりに誰も居ない事を確認してから。  オレは、類の真正面に、座った。 「……なあ。類って――――……男が好きなの?」  ぴく、と小さく動いた類が、少しして、ゆっくりとオレを見つめた。 「……聞いたんだ」 「うん。今日、聞いた」 「――――……で……確認にきたのか?」 「うん。そうだね、まず、噂が本当かを、確認」  オレが答えると、類は、ふ、とため息をついて、本を伏せた。  珍しい。本を伏せて、まっすぐ向かい合ってくれるらしい。  ――――……この質問には、ちゃんと答えようとしてくれるんだ。  ……答えて、終わらせようとでも、してんのかな。 「……分かんないけど……多分、そう」 「多分ってどういう意味?」 「……女の子好きになった事は無くて、男が1人だけ。……だから、多分……」 「ふうん。そっか。――――……良かった」 「……良かった?」  変な答えだとでも思ったんだろう。  咄嗟に類は、オレをまっすぐ見上げた。 「じゃあさ、類。――――……オレの事、好きになってよ」  は?  類の、険しい表情に、思わず笑ってしまう。 「類の好きになる対象が男なら、オレにとってはラッキーなの」 「……なに、言ってんの……?」 「オレ、お前が好きなんだ」 「――――……」 「今日聞いて、恋人同士になれる可能性があるんだって思った。そしたら、すげえ嬉しくて」 「――――……何、言ってんの、お前……」 「オレを、好きになって?」  まっすぐ、類を見つめる。  どんな表情なのか。  驚いてる。そりゃそうだ。  困ってる? 嫌がってる? 嫌悪してる?  それとも――――……迷ってる? (2021/8/8)
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