◇告白

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 ものすごく長い沈黙で。  類は、完全に無表情で、固まってて。  でもたまに。視線が、揺れて。  しばらくしてから、恐る恐ると言った風に、ゆっくりと、オレを、見上げた。 「――――……何、それ……お前、ゲイじゃない、だろ?」 「さあ……分かんないな」  オレは少し首を傾げて。  でも、まっすぐに類を見つめた。 「それ言うなら、オレ、今まで誰も好きじゃなかった。告られて付き合っても、ドキドキしないし。顔可愛いなとかは普通に思ったけど、でもそれだけ。……ずっと、こんなもんなのかなって思って付き合ってたけど」 「――――……」 「オレ、類の事だけ、こんなに好きだと、思った」 「――――……」  類の眉が、少し寄って。  すごく、戸惑った顔をしてる。  でも、嫌悪じゃない。それは分かる。  オレは、なるべくゆっくり、立ち上がって、類の隣に立った。 「類、手、貸して?」 「――――……?」  なんかもう、多分、思考がついてってないんだろうな。  いつもなら、貸してくれないと思うのに、戸惑った顔のまま、ゆっくり手を差し出してくる。  その手をそっと取って、オレの、左胸に押し当てた。 「分かる?」 「――――……?」 「すごく、ドキドキしてるだろ?」 「――――……っ」  ぴく、と手が動いたけど、そのまま、更に押し付ける。 「分かるだろ? ――――……こんなの嘘つけないよ」 「――――……」 「すごく、類の事が好き。最初に見た時から」 「――――……」 「顔だけじゃないよ。全部、好き」 「――――……」 「……自己紹介のあの……あんまりな感じも好きだし」  ぷ、と笑うと。  類はちら、とオレを睨む。 「ふざけてないよ? ほんとに好きなんだよ。オレへの返事の仕方も。目線すぐ逸らすとこも。 少し話してくれるようになったと思ったら、絡むなとか言っちゃうのは意味分かんなかったけど、噂聞いたら、オレに迷惑かかると思ったからなんだって分かったし。そんなんで、絡まない方がいい、なんて言っちゃうとこも――――……そういう類が、好き」 「――――……」 「類は悪いこと、何もしてないのに。 1人で居なきゃいけないとか、絶対無い。オレ、ずっと、そばに居るから」  類が、眉を寄せて、ふ、とオレから視線を逸らした。 「……手、離して」 「あ。ごめん。忘れてた」  ずっと胸の所で握りっぱなしだった。ゆっくり手を解いて。  それから、類の隣に、座った。 「……なあ、どうやったら、信じてくれる?」 「――――……」 「オレが、類の側に居るって。どうしたら信じる?」 「――――……」  困ったように、類が、俯く。 「……ごめん」 「――――……」 「……誰かを信じるとか……もう、したくない。元々オレ、そんなに人付き合い、してきてないし……」  そんな言葉に、少しの間考えたけど。  それって、つまり――――……。 「別に誰とでも付き合えなんて言わないよ。オレと一緒に居て欲しいんだよ。――――……類の信じたくないって、裏切られると思ってるからだろ?」  返事はない。  でも、そういう事だよな。  ――――……だったら。  オレがすべきは。もう、1つしか、無いかな。 (2021/8/8)
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