◇告白

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「信じたくないっていうのは……裏切られたくないって、思ってるんだよな?」 「――――……」 「な、類。オレ、絶対裏切らないよ。 裏切ったら――――……どうしよ。えーと。……オレの息の根止めてくれてもいいけど。それだと類が犯罪者んなっちゃうし……」 「――――……は?」 「んー……どうしよ。裏切ったら、オレの裏切りが全国に分かるように経緯全部、あらゆる所に流してくれてもいいけど……」 「…………ほんとに、何、言ってンの?」  類が、苦笑いだったけど、確かに、ぷ、と笑った。  それが――――……すごく、嬉しい。 「……うん。ほんと何言ってんだろ。……考える必要ないんだよね、それ。――――……オレ、絶対、裏切らないから」 「――――……」 「何言ってんだって思うかもしれないけど――――……オレ、ほんとに、お前が好きなの。全部」 「――――……」 「……なんか、動き一つ一つとか。何なら、座ってるだけでも好き。本に向けてる視線も、好き。後ろから、背中見てるだけでも、好きだった」  もう、オレばっかり、ほとんどしゃべってて。  類は、全然答えてはくれない。  でも。ちゃんと、聞いてくれてるのは、分かったから。  ずっと、色々話し続けた。  また、18時に、図書委員に帰されるまで。  オレは、思いつくままに、ゆっくりと。  類が好きな事と。  類に笑って欲しい事と。  ずっと側に居たいって、事と。  類にも、好きになって欲しいって事を。  類に、話した。  類は、返事、相変わらず、ほとんどしなかったけど。  一方的な、やり取りだったけど。  多分、今までで一番。  類が、ちゃんと、オレの言った事、聞いてくれてるのは分かった。  その日は、類は、本を開かなくて。  たまに、ちら、とオレに視線を向けて。  また、前を向いて。を繰り返してて。  また駅まで。  黙ったまま、並んで、歩いて、帰った。 「類」 「――――……」  改札を入った所で、改めて名を呼んだ。 「オレが、類を好きな事がさ……」 「――――……」 「もし、どうしても、迷惑だったら、そう言って」 「――――……」  類が、ふ、とオレを見つめる。 「オレに迷惑かかるとか、そういう話じゃないよ? 類が、オレの気持ちを迷惑って思うかどうか、だよ。――――……意味、分かってもらえてる?」  類は、しばらく無言で視線を落としていたけれど。  やがて。少しだけ、頷いた。 「オレが好きなのが迷惑じゃないなら――――……  これからずっと、類の側に居させてよ」  そう言ったら。俯いてる、類の瞬きが、何回か、続いて。  睫毛長い。  パチパチしてて、可愛い。  くす、と笑ってしまう。  笑ったオレを見上げて。  類が眉を寄せた。 「何で笑うんだ、今」 「――――……瞬き、多くなって。動揺してんのかなって。可愛かったから」  そのまんま、理由を話したら。  途端にもっと眉が寄って。「帰る」と、そっぽを向かれて。類が歩き始めた。 「類」  呼ぶと、困った顔で、振り返る。 「明日な?」 「……っ」  類は、また一瞬止まったけど。  そのまま、前を向いて、歩き去っていった。    ――――……すっごい、動揺してる。  ……可愛い。  ――――……オレの好き、が。  迷惑だって、言われないと、いいな。   (2021/8/10)
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