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「信じたくないっていうのは……裏切られたくないって、思ってるんだよな?」
「――――……」
「な、類。オレ、絶対裏切らないよ。 裏切ったら――――……どうしよ。えーと。……オレの息の根止めてくれてもいいけど。それだと類が犯罪者んなっちゃうし……」
「――――……は?」
「んー……どうしよ。裏切ったら、オレの裏切りが全国に分かるように経緯全部、あらゆる所に流してくれてもいいけど……」
「…………ほんとに、何、言ってンの?」
類が、苦笑いだったけど、確かに、ぷ、と笑った。
それが――――……すごく、嬉しい。
「……うん。ほんと何言ってんだろ。……考える必要ないんだよね、それ。――――……オレ、絶対、裏切らないから」
「――――……」
「何言ってんだって思うかもしれないけど――――……オレ、ほんとに、お前が好きなの。全部」
「――――……」
「……なんか、動き一つ一つとか。何なら、座ってるだけでも好き。本に向けてる視線も、好き。後ろから、背中見てるだけでも、好きだった」
もう、オレばっかり、ほとんどしゃべってて。
類は、全然答えてはくれない。
でも。ちゃんと、聞いてくれてるのは、分かったから。
ずっと、色々話し続けた。
また、18時に、図書委員に帰されるまで。
オレは、思いつくままに、ゆっくりと。
類が好きな事と。
類に笑って欲しい事と。
ずっと側に居たいって、事と。
類にも、好きになって欲しいって事を。
類に、話した。
類は、返事、相変わらず、ほとんどしなかったけど。
一方的な、やり取りだったけど。
多分、今までで一番。
類が、ちゃんと、オレの言った事、聞いてくれてるのは分かった。
その日は、類は、本を開かなくて。
たまに、ちら、とオレに視線を向けて。
また、前を向いて。を繰り返してて。
また駅まで。
黙ったまま、並んで、歩いて、帰った。
「類」
「――――……」
改札を入った所で、改めて名を呼んだ。
「オレが、類を好きな事がさ……」
「――――……」
「もし、どうしても、迷惑だったら、そう言って」
「――――……」
類が、ふ、とオレを見つめる。
「オレに迷惑かかるとか、そういう話じゃないよ? 類が、オレの気持ちを迷惑って思うかどうか、だよ。――――……意味、分かってもらえてる?」
類は、しばらく無言で視線を落としていたけれど。
やがて。少しだけ、頷いた。
「オレが好きなのが迷惑じゃないなら――――……
これからずっと、類の側に居させてよ」
そう言ったら。俯いてる、類の瞬きが、何回か、続いて。
睫毛長い。
パチパチしてて、可愛い。
くす、と笑ってしまう。
笑ったオレを見上げて。
類が眉を寄せた。
「何で笑うんだ、今」
「――――……瞬き、多くなって。動揺してんのかなって。可愛かったから」
そのまんま、理由を話したら。
途端にもっと眉が寄って。「帰る」と、そっぽを向かれて。類が歩き始めた。
「類」
呼ぶと、困った顔で、振り返る。
「明日な?」
「……っ」
類は、また一瞬止まったけど。
そのまま、前を向いて、歩き去っていった。
――――……すっごい、動揺してる。
……可愛い。
――――……オレの好き、が。
迷惑だって、言われないと、いいな。
(2021/8/10)
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