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昼。類は教室で食べないで、学食に行く。
ささっと食べて、その後は、晴れてれば、中庭のベンチのとこで日向ぼっこしながら読書。雨なら図書館で読書。
今日は、雨なので、絶対図書館、のはず。
弁当を食べ終えて、図書館に向かう道の途中。
女子の声に呼び止められた。
「佐原くーん」
振り返ると。マゾか愛かとか言ってきた、相原だった。
あ……変な子。
「なに?」
「今朝、久しぶりに佐原くんに話しかけてたでしょ」
「……気になる?」
「皆めっちゃ気にしてるよ」
「人の事なんか気にしなくていいのに」
「だって、桜木くん、あんなに綺麗なのに、誰とも喋んないし。カッコいいって言ってる女子も居るのにさ。で、それを佐原くんが崩せるかって楽しみにしてたのに、最近もう諦めたのかなって噂してたら、今日いきなりでさ。しかも、桜木くん、速攻出てっちゃうし」
「――――……桜木って、モテるの?」
なんか色々言ってたけど、一番気になることを聞いてみた。
「うーん、モテるというか。 顔綺麗でカッコイイから、憧れかなあ。 誰とも喋ってくれない人、なかなか本気で好きになる子は居ないから。まだ憧れどまりかな」
「へー……」
なるほどね。
そっかー。モテるのか。
「モテるのは佐原君でしょ」
「オレ?」
「ただでさえ、ほっといてもモテそうなタイプなのにさ。桜木君に声かけてあげて、優しいーとか、評価上がってるし」
「へえ。 面白いなあ、皆」
「面白いって……そこらへん、興味無さそうだね」
相原が、ふ、と笑ってオレを見上げてくる。
「あのさ」
「うん」
「愛かもしれない」
「え?」
「マゾじゃなくて」
「――――……愛なの?」
「うん」
くす、と笑うと。
相原は、へー、と笑った。
「2人を好きな子は、泣くかもねー。って、いいの? そんな事言っちゃって」
「だって、相原、誰にも言わないからって、こないだ言ってたじゃん」
「ああ。愛かマゾか聞いた時?」
「そ。言ってたろ?」
「うん。言ったわ」
クスクス笑って、相原は頷いた。
「――――……受け入れてもらえたら、隠してもらわなくてもいいと思うけど」
オレの言葉に、相原は目を大きくして。
それから、めっちゃ面白そうな顔で笑った。
「分かった。めっちゃ楽しみに、見守ってるねー」
楽しそうに、駆け出して消えた。
…………やっぱ、変な子。
ぷ、と笑いながら、図書室に向かう。
居た居た。
ほんと。どんだけ本読むつもりだよ。
その時間の1/10でいいから、オレに使ってくんないかなあ、と思いながら。類の隣に座った。
雨だから他にする事が無い奴が来てるのか、放課後よりは、人が居るけど。類が居る端っこは、誰も居ない。
「類」
「……オレ、迷惑って、言った」
こっちを見ずに、類が言う。
「……ほんとに、心から迷惑ならね」
「――――……心からだよ」
視線が少し彷徨って。
それから、そう、静かに言う。
「――――……そうやって、迷ってるみたいな顔するから。オレが諦めないんだって、分かる?」
「……迷ってなんかない。……お前が言う事、いちいち、意味が分かんないんだよ……」
「嘘だよ。類、頭いいんだから、分かってるだろ」
「……」
はー、と類がため息をついてる。
(2021/8/11)
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