◇告白

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「なー、類?」  呼んだ言葉は無視されたので、隣の類に更に近付いて。 何、と強張った耳元で。 「類、デートしよ?」  そう言ったら、眉を寄せて、オレをマジマジと見つめてくる。 「――――……は?」 「もっと、オレの事、ちゃんと知って?」 「……知りたく、ないし」  ……そんな言葉でめげてはいられない。 「知ってくれても、迷惑っつーなら、ほんと、もうちょっと真剣に受け止めるからさ」 「――――……つか、今も、受け止めろよ」 「なあ、1回、デートしてみようよ?」 「――――……やだ」 「えー。じゃあ、デートしてくれるまで、ずーっと、類の隣で、デートプラン提案し続けようかなあ」 「……ていうか、オレ、お前が、どんな奴か、もう分かってるし」 「え。ほんと? どんな奴?」  わくわくしながら、類の言葉を待っていると。  しばらく無言の後。  はー、とため息を吐いた。  短い一言で、変な奴、とか、しつこい、とか、まあ、そういうのが飛んでくるのかなと、思っていたら。 「……他人の事いっつも見透かして生きてて。 おせっかいで。人気者なんだろうし、良い奴に見えるけど、結構冷めてるし。空気読めるくせに、たまにわざと読まないで、人に圧かけてるし。……オレにとってはこの世で一番、意味わかんない奴」 「――――…………」  ――――……う、わー。  ……大体悪口? そういうのだけ、めっちゃすらすら出てきたな。  でも――――……。  ……結構、合ってるかも。 「……何、それ。いつそんなにオレの事見たの」 「教室…とか」 「――――……すごい、類」 「……認めんの? 今の。 ほぼ悪口だけど」 「ん、認める」  そう言ったら。類は、呆れたようにオレを見た。 「……でもなあ。なんか、いいとこ、ないの? いっこ位見つけてよ」  そう言うと、類はまたため息をついて。  それから。 「――――……本質んとこが」 「本質? うん、なに?」 「……優しいんだろうなとは、思う。嘘は付けなそう」 「――――……」  ……あ、なんか、すげえ嬉しい。 「類」 「……なに」 「抱き締めてもいい?」 「良い訳ないだろ。バカなの?」  その即答に、オレは、ぷ、と笑いながら。 「――――……」  ……嘘はつけなそうって。  なんだ、類、オレの事、信じてんじゃん。少しだと、しても。  ――――……てことは。  恋愛んとこは、信じられないっつーことか。 「……類、デートしよ?」 「だから、嫌だって。しないって」 「類がオッケイくれるまで誘い続けようかなー……」 「ていうか……名前で呼ぶなってば」  疲れたみたいに、類が息を付いてる。 「ほんと、意味が、わかんない」  本を閉じて、類が立ち上がり、椅子を奥に入れて歩き出す。  ふ、と笑ってしまう。 「一緒に教室行く」 「一緒に歩かない」 「――――……一緒には帰ってくれたじゃん」 「……もうやだから、迷惑って言った」 「……オレ、どんな噂立っても、何とも無いよ?」    そう言ったら。  類は、ふ、とオレを振り返って。  眉を寄せたかと思うと。無理、と言って、首を振って足早に歩き去ってしまった。さすがに、見られたくない類の後ろを、追いかけて歩くのは本気で嫌がられそうなので、断念。  あ。そうだ。  明日晴れたら、放課後、交流体育祭の練習って言ってたっけ。  バスケ部もさぼれるし、類とも走れる。晴れてくれるといいけどな。  図書室の窓際、振り返って、どんよりとした空を見上げながら。  ほんと、手強いよな、なんて、また思って。ふーと息をついた。 (2021/8/12)
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